ゆきゆき

ザ・ホエールのゆきゆきのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.0
家族と別れ、愛するパートナーを失い、神をも見限った主人公のチャーリーが人生の最期に救いを求める物語。

喪失感を埋める為に過食を繰り返し、極度の肥満症になった彼はそのせいで僅かな命となる。本来ならば生きる為の欲求である「食事」が、今の彼にとっては死へ近づく行為でしかない。悲しみと苛立ちのままにピザを頬張る姿は本当に痛々しい。

チャーリーの最期の願いは娘のエリーとの関係修復。理由はどうあれ、自分勝手なことだとは思う。エリーは父親譲りの繊細な心と文学に対する豊かな感性を持っているが故に、ずっと傷つき父親を許せないでいる。当然だと思う。それでも彼女の資質を肯定し、歩み寄る姿勢を絶やさなかった果てのラストは大きく心に残る。個人的にはチャーリーには生きる手段も選択肢に入れて欲しかったが、すでに誰の言葉も思いも届かない所まで行き着いているのだろうし、その象徴としての肥満の身体であると思う。

特殊メイクを身に纏いながら、聡明で純粋なチャーリーを演じきったブレンダン・フレイザーは見事。オスカー受賞も納得ですね。
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