Automne

ザ・ホエールのAutomneのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
2.8
何が良かったのか全く分からなかった。なのに絶賛レビューばっかりでびっくりしている。笑

わりかし全体的に自業自得でいまの状況になった人間が自己を正当化するまでの物語。やっぱり経済的にも恵まれていて周囲にちゃんとした人間もいるしその意味での"生きること"が全く心配ない状態で"贅沢なこじらせ"をしている物語は苦手だ。
フォーカスされるのは怠惰な過食ライフで絵も地味、人に迷惑かけて生きてるだけ。
血のつながりというDNAに訴えることによって事実を棚に上げて感情の問題にして絶縁の娘と元妻に繋がり持とうとするのも人間として姑息すぎて共感できず。DV男が頭なでなでして仲直りするのと一緒の論理。

エッセイの"正直な言葉"に関しては文学なんて高尚ぶらなくてもHipHop聴いてたらたくさん出てくるし、私はその意味で"正直に"レビュー書いてるから許して欲しい。

パートナーの早逝に関しては『サマーフィーリング』とか『ゴーストストーリー』みたほうが感動するし、分かりやすいキリスト教批判に関しても新しさはなく東洋思想読めばってなるし、ドランの出てる『神のゆらぎ』のほうがより良い解像度で信仰を語ってる。

太ったこと=醜いに関しては、あれ?太った人は太ったことが美しいしミスコン優勝ですよねアメリカさん?みたいな、"肥満"を「痩せてるだけが美しいんじゃないんです!デブこそ美しくて正義!」と描くと界隈から褒められるのに、逆に"肥満"を「生命の危険がある社会問題」として描くと「デブは醜いものである!アメリカの闇!やっぱり痩せるの大事!」と界隈から褒められてしまうアメリカという国のダブルスタンダードさにびっくりする。

でもたぶん本作はそうやってすべてをごまかして正当化し続ける物語なんでしょう。言い訳を繰り返してそれを寄り添ってそれっぽく描くことによって何となく良い話にしようとしている。
"クララが立った"以上の何の驚きもなく、そしてクララは自分で身体を破壊したわけではないので外の世界を見れないのはクララのせいじゃない、なのにひたむきに立つからこそクララは美しい。逆に本作では主人公は自分のせいでそうなっているし自分で変えられるのに変えようとしない。あれかもしれない、"デブがちょっと頑張る"というのは、"ギャルが正しいことを言う"とか"外国人は優しい"という日本のネットミームと一緒で、安易に共感されやすい一種のフォーマット(レッテル)として機能しているのかもしれない。その意味では身の回りの世話をしてくれるパートナーの妹がアジア人でしっかりしてるというのもレッテルのそれっぽい貼り方。ポリコレの流れで映画世界はどのように気を遣うかって考えた方が良いとは思うけれど、クズ男にデブ属性付加してアジア人とかゲイとかマイノリティ要素を申し訳程度にのぞかせることによってクリアしようとしてる感がなんとも言えない。

気になった点
・娘のFB投稿、ネトストしてるくらいだからすぐ気づけなかったの?(早く主人公が気づいたらプロットが崩壊する)
・鯨を自分に喩えるというのはお洒落だけど文学的高尚ぶる+被害者ポジに自分を持っていくのが姑息(自分で自分を鯨に重ねて狩られる側ですという居直り)
・主人公の死んだパートナーへの想いと、妻と娘とパートナーの妹の感情を描けていない(独りよがりの物語)
・死ぬタイミングがしっかり分かっているのが"設定です"感出すぎて入り込めない(余命系病気系の感動のさせ方の類型を出ない)
・ちょっとサグい女の子に真理を語らせようとしすぎ(彼女にも間違ってる部分はある) 

これ以上書いても不毛なのでこれで終わります。対戦ありがとうございました。
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