鳩摩羅什

ザ・ホエールの鳩摩羅什のレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
3.5
人は誰しも何かしらの欠落を抱えている。それは小さなコンプレックスから大きなトラウマまで様々だが、大きな欠落はそれゆえに人生が狂ってしまうことがある。そのトラウマを「鯨」と呼ぶなら、本作は「大きな鯨を抱えた男」が主人公だ。
メルヴィルの『白鯨』は、食いちぎられた片足の欠落を復讐で埋めようとする男の物語であった。本作もトラウマを乗り越えようともがく男の物語だ。
愛する者を失った悲しみと愛する人を捨ててしまった後悔。「自分らしく生きたい」という願いは「自分らしく死にたい」という願いになるのだろうか。命をかけて「鯨」との最期の戦いに、文字通り立ち上がる。
アカデミー賞受賞のブレンダン・フレイザーの演技と特殊メイクは素晴らしい。ほぼ全編が一つの部屋で展開されるのも凄い。にも関わらず総合評価がいまひとつなのはその作為的なストーリーのため。脚本は正直に書かなきゃ。
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