Monisan

ザ・ホエールのMonisanのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

観た。

ずっしりとくるものがある。
これは映画館で観たかったな。

正しさだけで、出来ている人なんかいなくて。チャーリーも周りの人達も皆んなどこか間違っていて、それでも最期に「僕は人生でたった1つ正しいことをした」と信じたい、と。この台詞はとても悲しかった。

ブレンダン・ブレイザーが素晴らしい。特殊メイクも高い技術だけど。異常な肥満状態の悩み、愛する人を亡くした悲しみ、時折見せる笑顔やポジティブシンキングであっただろう一面など、1人の人間の最期の1週間を観させてもらった。

リズは献身的な看護士でもあり、チャーリーの友達でもある。また兄の恋人でもあった。その優しさは、無償で真実の愛情。

エリーは少なくとも、チャーリーの家に来るまでは母親の言うように手がつけられない反抗をしてきたのだろうな。
母親も決して悪くないし、お酒に逃げざるを得なかった部分も理解出来る。彼女も捨てられた身だし。
でもチャーリーはエリーのエッセイに彼女の正直さと才能を感じ、そこを心の拠り所にしたかった。

ニューライフのトーマスは割とどうしようも無いままかな。
ピザ屋のダンにも期待はしたが、まぁ当然の反応か。

そこからの暴食は凄い迫力…
エリーは、トーマスを傷つけようとしただけだろう、きっと。
学生達への最後の講義もショッキング。幾ら良い事を伝えていても、多くの学生はオンライン上でああいう反応だろうな、学生達の表情がリアル。

リズとのやり取りも良かった。看護士だから分かる死期とその向かい合い。チャーリーはアランを救えたのか…救えなかったのか。リズの人は誰かを救え無い、という言葉に対し、チャーリーの「どんな人であれ、誰かを気にせずにはいられない」「People are amazing」これらも良い台詞。

最期にエリーに自分のエッセイを読んで聴かせろ、と。意味が分からずに反抗しつつも読む。自分の脚で歩み寄るチャーリー、読みきった後の笑顔の2人。
チャーリーは最期にエリーのエッセイによって救われた。そして父を救えたという経験が今後のエリーの人生をもきっと救うんだろう、と感じさせてくれる。脚がふと浮かび、光に包まれて海辺の2人の景色に。なんて美しいラストシーン。

泣けるとかでは無いんだけど、メッセージが胸にしっかりと刺さる、前向きな濃厚な映画。

ちなみにアマプラの字幕が良くなかったんだけど、WhaleとFor a little whileで韻を踏んでいる、って事なのかな。毎回チャーリーがクスッとしてるし。字幕だと"少しの間"って意味分からん。
"このアパート臭い"のエッセイの時も、チャーリー文節の数数えてたから英語の俳句的なものなのかと。

ブレンダン・ブレイザーはアカデミー賞の主演男優賞、特殊メイクでも受賞。リズのホン・チャウも助演女優賞でノミネート。

LGBTとか、人種のバランス、離婚後の子育て、SNSの悪用、リモート講義等々、現代っぽい要素を押し付けがましくなく取り入れているのはA24配給、流石。

元は2012年に上演された舞台劇。
ダーレン・アロノフスキー、監督。
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