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ザ・ホエールのwacchiのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.2
内容はさておき、何とも言えない緊張感で終始引き込まれ、久しぶりに作品に没入した。ほとんどのシーンが部屋の中で完結しているのに、エンドロールまで没入感を引きずるとは思いもしなかった。
これは俳優陣の演技の素晴らしさに支えられている訳だが、中でもブレンダン・フレイザーの演技はやはり突出している。アカデミー賞に異論なし、と思った人は本当に多かったのではないか。
あの巨体が立ち上がる、歩く、落とした物を必死に取ろうとする、こういうことの一つ一つが命懸けで、その演技からも必死さが伝わり緊張感が走る。恐れ入りました。

内容は
人は誰かを救えるのか?
これが本作のテーマになっているのだが、視聴者がこのテーマを考えさせられるというより、チャーリー自身が人(娘)を救って死ねるかどうかを見届けるという不思議な感覚。
初めはチャーリーは恋人を失ったストレスから過食に走ったのだろうが、実は途中からは太る目的があったと自分は解釈している。その目的は娘を救うことであり、その為に食べたくもない高カロリー食を必死に食べ続けホエール(哀れな巨体)となり、そして死期が近づいたところで娘を呼び寄せ、エッセイを通じて娘自身の本来の美しさに気付かせることだった、ということか。
最後娘がエッセイを読む時、背後は外の日差しで神々しさに包まれている。やり遂げ、平穏に包まれ、天国へ旅立つ。すごいシーンでした。

人は誰かを救えるのか? このテーマは最後、愛する人を救うために貴方は死ねるか? そんな問いに変わっていた。

これは傑作でした。
劇場で観るべきだったな。
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