犬

ザ・ホエールの犬のレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.3
人の過ちと許し、それの当事者である人々の物語。

ポスターが強烈すぎてあらすじすらあまり読む気になれなかったけど、ふと観てみたくなり鑑賞。結論めっちゃ好みだったし面白かった...!
主人公のチャーリー、すごく人間らしいなと。将来に大きな影響を及ぼす「家族を捨てる」という過ちを犯してしまったことも、それでも娘のエリーに対する愛情は何も変わっていないことも、彼自身の自己肯定感の低さ(病的なものかもしれない)も、すべて彼を構成する大切な要素に思える。こういうキャラクターが登場する作品好き、!
チャーリーの見た目を受け入れ、もしくはそれに慣れて、見た目に対する言及をせずに接してくれる家族とリズ、そしてトーマス。彼女たちを見ているとつい「この対応の仕方が普通なんだ」と思ってしまうけど、配達員のダンや初めてチャーリーを見たオンライン授業の参加者たちのゾッとした表情が映し出されたとたん現実に引き戻される感覚になった。現実はもっと冷酷で刺々しくて余裕がない。
そういった現実から守り居場所を作ってくれる、ある種異質な関係性が"家族"なのだと思う。根本の部分では愛のあるチャーリー達の関係性が好きだったし、自分の理想の家族像に近いものを感じた。


2023年度のアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞に輝くのわかるほど特殊メイクが凄かった。けど個人的には特殊メイクが施されたブレンダン・フレイザーの異質さを引き立たせるカメラワークとか、作品の重厚感を演出したり、ラストで読者の想像力を掻き立て余韻を残すような見事な音響技術の方が印象的だった。
犬