むらむら

KKKをぶっ飛ばせ!のむらむらのレビュー・感想・評価

KKKをぶっ飛ばせ!(2020年製作の映画)
5.0
タイトル通り、黒人姉弟が、KKK相手をぶっ飛ばすだけの話。

日本の配給は低空飛行で安定・安心のトカナ。宣伝文句の

「『ゲット・アウト』『アス』を超える衝撃!」
「タランティーノを超えた!」

は、誇大広告にもホドがある。そろそろトカナは消費者庁かタランティーノから訴えられたほうがいい。

「全米上映禁止」ってのも、単に配給が決まらなかったんじゃないの!? と穿った見方をしてしまう。

filmarksのPCページの予告編動画リンクも

「該当のURLはYouTubeアカウントが停止されてます」

って出て、映像観られないの、ヒドくない? この作品、filmarksに生息するキモオタマニア(俺)がターゲットなんだから、ベースのマーケティングくらいちゃんとしようよ……。

映画公式サイトに

「出演は(中略)新人ディオンドル・ティーグル(ブランドン)、『スパイダーマン:ホームカミング』のフェイス・モニーク(姉)、「デビアスなメイドたち」のトラヴィス・カットナー(兄)、『スイング・ステート』のトーマス・マーク・ヒギンス(KKKボス)」

って書いてあったから、

「えーっ、こんな女の人、ホームカミングに出てたっけ?」

と記憶になかったので、IMDBで検索したら、

「フェイス・モニーク:旅行者(クレジットなし)」

ってなってた。

ついでに言うとトラヴィス・カットナーも「デビアスなメイドたち:受刑者(クレジットなし)」、スイング・ステート:トーマス・マーク・ヒギンスも「町の住人(クレジットなし)」。

いや全員エキストラやん。別に素人みたいな人がキャスティングでも良いのだが、よくもまぁ堂々とアオリに書けるよな……。トカナはスパイダーマンから訴えられてもーー以下略。

前置き長くなったので本編の感想。

時は1971年。脱獄したばかりの黒人青年ブランドンは、しばらく森の中のボロ小屋に兄と姉と共に潜伏することになる。だがその小屋は、白人至上主義者KKKの持ち物だった、という筋書き。

基本的にKKKが激ツヨの黒人姉弟にボコられるだけの映画なんだけど、正直、映画の作りとして甘い部分がありすぎて、78分という短い上演時間の中でも、頭の中にハテナマークが浮かんでくることしばしば。

幾つか気になったポイントを指摘しておく

1.登場人物が全員バカ

掘っ立て小屋に籠城している黒人姉弟とKKK白人一味の籠城戦なんだけど、両方とも、ほぼ何の策略もなく、真正面から殴り合う。ただそれだけ。

フツーの脚本家なら、「ホーム・アローン」ばりに、どうやって無力な黒人姉弟が狡猾で残忍なKKK団を罠にハメるのか、を考えるとこなのだが、基本的に、姉弟一緒に小屋に潜んで、真正面から近付いてくるKKK団と銃撃戦やるだけ。挟み撃ちにするとか、仕掛けを使うとか、もうちょっと頭をヒネろうよ……。

対するKKK団も、基本的に真正面から小屋に突進してくだけなので、正義感が強いのか何なのかよく分からないが、簡単にブチ殺されていく。いやいや、ロシア軍でも、ここまでバカじゃないでしょ……。

それと、KKK団の連中、白頭巾かぶったままでの銃撃戦、視界が遮られすぎて、圧倒的に不利じゃない? 案の定、ほぼ黒人姉弟の的になってたし。なんかあまりにバカでキライになれなかったわ。

2.映画としての作りが雑

普通の映画なら、伏線みたいなのがあってそれを回収するのだが、そのあたりがかなり雑。

例えば、KKK団を襲うシーン。扇風機を執拗に映してるから

「おっ、これは扇風機グロくるか?」

とワクワクしてたらフツーに銃殺。

おい! さっきの扇風機は何だったんだよ! 俺の期待したグロはどこにいった!

それに、同じシークエンスの繰り返しが多い。この短い78分の中に、

「弟がピンチ→姉がKKK団の背後から攻撃」

のシーンが2回も出てくる。

「監督! このシーン、さっきやりましたよね!」

絶対、現場ではこんな意見が出てたと思うのだが……まぁトカナ作品だから仕方ないか。

3.設定がしょぼすぎ

この作品、1971年、米国南部、という設定なのに、徹頭徹尾、森の中で撮影されている。

いや、予算がないのは分かるのだが、それにしても、森の中の掘っ立て小屋の周りを、こんなにKKK団がウロウロしてる、ってヒマすぎない? みんなでピクニックでもしてんの?

「とらきち」さんによると、ちゃんと米国南部で撮影してるらしいのだが、全くその空気感が感じられず、白人vs黒人でサバゲーやってる感が強かった。

そして、上の伏線の話にもつながるんだが、小屋にガソリンを撒くシーンがあったら、絶対に小屋を燃やすとか爆発させる、ってのを期待するんだが、それも無し……ってどれだけ予算ないのよ!

ガソリン撒く→何も起こらず のコンボは、さすがにショボ映画に慣れた俺ですら、中折れ感ハンパなかったぜ。

4.まとめ

上記「とらきち」さんや「okimee」さんが書いてるように、テンポがゆっくりかつ編集がダラダラしてるので、全く緊張感がない作品だった。

なので、考えに考え抜かれた「アンテベラム」や上記作品とは、エベレストと海抜0mくらいの差があるよなぁ、って感じ。

ただ、グロを頑張ってる点は評価したい。詳細はハブくが

🧔
🪓
🥼
👖



ω
🔥

↑のシーンは良かった。

ま、「アンテベラム」のようなメチャクチャ考え抜かれたスリラーには及ぶべくもないが、作ってる人たちが楽しんで作ってるんだろうなーってのだけは伝わってきた。たぶんKKK団の下っ端は、監督の近所に住んでる人たちとかバイト先の先輩とかじゃないかな……。

上映時間78分なのに、体感では2時間半くらいに感じるので、映画を観ながら勉強とかしたい人には★5でオススメ。色々書いたが、トカナ好きには堪らない作品だし、俺は満足した。

それとこの作品で、俺が最近観た映画、四連続で嘔吐シーンが出てきた。嘔吐シーン流行ってるのか……? それとも俺が悪いのか……?

少なくとも「嘔吐」と入力しようとして「王都」が変換の一番先に出てくるのは、エルデンリングのやりすぎの俺が悪い。

ちなみにトカナの映画配給は、「エクストリーム」って名前に変わるらしい。

「気をつけろ そのエクストリームは トカナかも」

を今後座右の銘として、映画館に臨むことを心に誓った俺なのであった。

(おしまい)
むらむら

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