骨折り損

ハッチング―孵化―の骨折り損のレビュー・感想・評価

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
4.0
家族がみんな孵化する話だと思ってたら、孵化した鳥の卵を少女が育てる話なのか。

自分で書いていて家族が孵化するって意味わからんな。まぁいいや。

話としてはそこまで変ではない。かなり王道。普遍的なメッセージを伝える為にキャッチーな卵というモチーフが使われているようで、分かりやすい内容ではあった。

なんだか雰囲気としては『ビバリウム』を彷彿とさせた。僕は『ビバリウム』の方が謎の小出し感にワクワクできて好きだったけれど、この作品も好みではあった。

少女が毒親によって抑え込まれていた精神性を露わにしていく物語はかなりよく見る題材だが、それをサイコホラーというよりかは意外とクリーチャーパニック映画として描いているのは面白い試みだと思った。怪物の造形もチラ見せではなく、ガッツリ全体を見せてくれるのでそこは好印象だった。ちゃんと気持ち悪いし。

少女がだんだんと暴走していく様は『エクソシスト』を彷彿とさせた。衣装も含めてかなり意識していることは明らかだが、『エクソシスト』ほどの絶望感は今作にはなかった。『エクソシスト』は自分の中で歴代ベストホラーレベルで震え上がったのだが、今作のパニックシーンはもう少し客観的に娯楽として楽しめていた。決して没入感が低い訳ではないが、ただこの家族が不憫だとかそういう主観的な見方はしていなかった。

あと気になったのは、主役の少女が美形過ぎて、クリーチャーになっても怖いよりも顔整っている印象が勝ってノイズだった気がした。綺麗だからこその怖さはいくらでも演出できると思うが、この人は表情筋なのかな、もっと気色の悪い顔の動かし方ができたんじゃないかと思った。

かなり楽しめる映画だったけれど、最後の着地は少女の母親のように「もう一回」と言いたくなった。それは厳しい批判ではなく、この作品が好きだったからこそもっと幸せに終わって欲しかったという願望からだ。
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