ハッチング―孵化―のslowのネタバレレビュー・内容・結末

自分以外を愛せない毒親に育てられた（付き合わされて来た）ティンヤは、自分の中で何かが大きくなっていることに気が付く。それは母親に対していい子を演じ続けるティンヤのストレスのようでもあり、ティンヤの本性なのかもしれない。本作はこの目に見えないものを実体化させているところが面白い。これはわたしの大好きなジャンル。恐らく摂食障害から来るものであろう暴食と嘔吐を、雛鳥に咀嚼した食べ物を与えているように見せている点も、悪趣味スレスレで何気に凄い。子供に決して言ってはいけないような言葉しか出てこない母親の徹底した胸糞っぷりと、こういう時は大体蚊帳の外な男たちの情けなさ（日頃から父親は無関心、弟は反抗的だし）。そして、ラストで遂に生まれ変わるティンヤの表情が神々しくてたまらなかった。美少女がいかにもホラーしてるって感じは薄いけれど（普通のホラーならあの爆誕以降が盛り上がるところでしょうし）、包丁持ってる姿とかとても素敵でしたよ（癖）。アッリの造形も妙にグロテスク寄りで良かったし、あの唄が何気に効いてます。この家族が崩壊するのは仕方ないとしても、レータと犬はただただ可哀想な役所。でもやっぱりこれは素晴らしい。このような作品はいくつか観たことがあったけれど、本作はかなりの秀作と言っていいかと（個人差あり）。