バランシーン

ハッチング―孵化―のバランシーンのレビュー・感想・評価

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
3.8
出来は粗いが非常に野心的な作品を観たという感じ。期待はいい意味で裏切られました。

ストーリー的には『ブラックスワン』ですね。こちらの方が過度にソフィスティケートされてる分だけ、胸糞感が強いです。そして主人公がナタリー・ポートマンから10代半ばの女子(シーリ・ソラリンナ)に代わっているので生々しさも増してます。
中身は毒親、思春期少女の心身の発達とダークサイド、代理人生・代理欲求、抑圧と承認…などなど、結構広範なテーマを詰め込んでます。でも、あんまり冗長にはなっておらず、90分ちょっとでコンパクトにまとまってるのは、監督の力量ですね。そして監督は女性と知って、納得感あるような素直に驚くような…。

ドッペルゲンガー的にアッリが成長し、主人公の文字通り剥き出しの人格を代行していくのは、クリーチャーホラーとして観ても、メタファーとして観ても面白い。
ラストはティンヤの本当の人格の解放とも受け取れ、僕は良い出口と感じました。演じてきた偽物のティンヤは死に、解放された剥き出しのティンヤが生まれた、みたいな。
ただ、この母親はこの“ティンヤ”も自身の“幸せ”のためにしか使わないだろうとのクラクラするような読みも可能で、いやー面白いなぁ。

いずれにせよ、観る側に解釈と思考を強要する良作でした。
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