ふぇいるくん

ハッチング―孵化―のふぇいるくんのレビュー・感想・評価

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
3.5
表面的でペラペラな幸せを家族ぐるみで演出する典型的な機能不全家族を舞台にした、これまた典型的なホラー映画です。

人間の妄念が異形として具象化する、という意味では、映画では初期~中期のD・クローネンバーグのホラー作品を、漫画では楳図かずおの怪奇漫画などを彷彿とさせます。
つまりホラーの古典です。

この映画も古典的と言うか非常にオーソドックスな作りで、映像表現的にもそれほど新味があるとは言えません。

とはいえ、本音を言い合えない家族関係・存在の希薄な父親・SNSに依存する過度な承認欲求など、現代の(もしくは昔からの)家族が抱える諸問題がこれでもかとてんこ盛りで、観るものを飽きさせません。

なにより癒着といってもよいほどの母娘関係は問題だらけ。
母子逆転・共依存・過度の欲求・同一化など、ダメ母子に見られるトラブルは余すことなく網羅されており、機能不全の総合商社といった感。
問題家庭に暮らす思春期ヤミ系女子などが観れば、そこそこ刺さるのではないでしょうか。

とはいえ家庭を扱った傑作「普通の人々」などに比べると、家族描写はややマイルド。
ホラーとしても先に述べたようにそれほど斬新な表現があるわけではありませんので、A・アスターの諸作のように尖った映画と言う感じでもなく。
10年に一度の傑作!というような作品と言う折は、むしろプログラムピクチャー的お手軽さで、楽しく観られる一本です。
むしろこういう優れたジャンルムービーが少なくなっている現在のポンコツ映画界的には、希少な一本かもしれません。

主人公を演じる娘さんの美少女っぷりが半端なく、今後の活躍が期待されます!ってところも、ポイント高いですね。