みりお

ハッチング―孵化―のみりおのレビュー・感想・評価

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
3.8
"完璧な生活"を求める母親が作り上げた、真っ白で煌びやかな豪邸。
その中へ飛び込んできた真っ黒なカラスは明らかに異質ではあったが、その異質な物体を躊躇いもなく絞め殺した母の行動が、完璧な家族を信じていた、無垢な少女の抑圧された気持ちを呼び起こす…

毒親とも言える母親なのに、そんな母親に愛されたくて、母に認められるために必死なティンヤ。
だがそんな彼女が、母が排除した黒い異質物"カラス"となって、新たな自分を作り上げていく様子には恐怖を覚えた。
けれどあのティンヤの分身であるアッリは、少年少女の中には必ずしも芽生える自我であり、反抗期の象徴なんだと思う。
ティンヤは決して望んだわけではない。
母に愛される少女のままでいようとした。
だが心に訪れる変化は彼女を飲み込み、母が守ろうとした"完璧な家族"像を内側から破壊する。
豪邸から生ゴミとして捨てられたカラスが、決して排除することのできない愛娘となって戻ってくる様は、まさしく虚飾に塗れた"理想の家族像"の崩壊。

救いようのない胸糞作品だが、そこに北欧映画らしさをも感じる。
こんな作品嫌いじゃないんだよなぁ〜と感じてしまう私がいることも事実😂


【ストーリー】
北欧フィンランドで家族と暮らす12歳の少女ティンヤ(シーリ・ソラリンナ)。
完璧で幸せな家族の動画を世界へ発信することに夢中な母親を喜ばすため、自分を抑えるようになった彼女は、体操の大会優勝を目指す日々を送っていた。
ある夜、ティンヤは森で奇妙な卵を見つける。
ティンヤが家族には内緒で、自分のベッドで温め続けた卵は、やがて大きくなり遂には孵化する。卵から生まれた「それ」は、幸福に見える家族の仮面を剥ぎ取っていく。


【スタッフ】

*監督:ハンナ・ベルイホルム
フィンランド出身🇫🇮
本作が長編デビューとなるようですが、様々な短編映画やTVシリーズを監督しており、2018年の『Puppet Master』は世界の映画祭で高い評価を受けたそうです✨
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