青の

ハッチング―孵化―の青ののレビュー・感想・評価

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
4.5
【 背骨のゴツゴツ 】

YouTubeをダラ見していると、たまに「どーゆーアルゴリズムよ?」ってチャンネルがオススメされたりする。

その一つにこれ→東南アジアか何処かの小さい娘っ子が、湿度高そうな田畑で懸命に働いているだけの動画。
正直目新しくもないし、まあ、面白いとは言えない。
とりあえずは「のどかで、のんびりしていて良いねぇ」なんてボーっと見ていると、カメラアングルがどうにも変。
暑い地域で服の乱れや体勢などを気にせず、忙しく働く娘を狙うアングル。
そう、そういう目線で釣る動画だったのだ。

通報するにも「ネイチャー」がテーマって事にしているチャンネルだ。
投稿主は「そう言う目線で視聴しているお前がヤバイ」って言い訳を用意しているだろうし、できる事は個人でブロックするのみ。



前置きが長くて申し訳ない。
今作の「ソーシャルメディア承認欲求モンスターサイコパス」な母ちゃんを見て、速攻で「コレだな」って察した。

母ちゃんのこさえる『素敵な毎日』って動画がクソ&クソつまらな過ぎるのだが、ちょいちょい娘のティンヤをレオタード姿で登場させているのだ。
つまり、母ちゃんもソレをしていたのだ。
再生回数もソレでもっていると分かっている。

「見栄えの良い私達を見て見て欲求」はどうにも止まらない。
そこに「仕込み無し。ありのままの私達」など皆無。
というか「虚構が日常」として捻じ曲がっていたのだ。

そんな見栄えが生活の中心にある家に乱入する一羽のカラスは、部屋中に飾られた母ちゃんの「見栄えグッズ」を徹底的に破壊する。
そのカラスが象徴するものとは?….。

(母ちゃん、あの混乱時でもスマホだけは必死に回収していた)

基本、今作は暗喩/比喩/メタファーで構成されており、分かりやすい寓話だと思いました。
ホラーではあるようだけど、あまり深く考えずに日本昔話しやグリム童話な感覚で見た方がすんなり(怖いけど)入ってきそうな気がしました。

—以下、ネタバレあり—





























—ネタバレ—

★気付いた事箇条書き

・人は良いが冴えない父ちゃん(財力はある)。母ちゃんとベッドが別々。母ちゃんの顔色ばかり伺っている。

・父ちゃんに見た目が似ている弟。母ちゃんにどうでもいいと思われている。癇癪をおこしたり騒いだりして気を引こうとする。

・ティンヤ、いつも愛想笑い。こうあるべきとしている。何も出来ない。カラスは自分。
・そのカラスが「見栄えグッズ」を破壊→ティンヤの本心→そのカラスの首を折る母ちゃん。
さらにとどめ→自分の本心を殺す。

・隣に引っ越してきた子→ティンヤの理想。憧れの世界。

・母ちゃん、レオタードのティンヤで視聴回数伸ばしたい→体操は失敗させない→永遠にティンヤを利用したい→その手柄は全て自分のもの。
・YouTubeが上手くいけば冴えない父ちゃんいらない→イケメンに乗り換え(自分に相応しいイケメン)→それをティンヤは気付いている。

・カラス人間→押し殺していたティンヤの自我=本心が具現化。
ゲロを食べるカラス人間→ティンヤの「闇」を食べて育つ。

・その発現の原因→ティンヤも含め全て自分のためだけに操ろうとするサイコモンスター母ちゃん。
本当の化け物は誰だ?

母ちゃん「あれは何なのよ?!」
ティンヤ「あれは私が育てたの」

ラストは映画の主軸の通り『中身なんか何でもいい。見栄えが良けりゃいいのよ』で締め括られる。
つまり、中身カラス人間だけど、たぶん何事も無かったかのように、母ちゃんYouTube更新するんだろうな的エンド。

しかも、カラス人間の母カラスはティンヤの母ちゃんに殺されているのに。
抑圧と愛情のごった煮。
可哀想なティンヤとカラス人間。


—〆—

このハリウッドには無い独特な雰囲気が良いですよね。
また、ルールやモラル無視な感じな作風は今後も貫いて欲しいです。
青の

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