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バイオレンスアクションのEPATAYのレビュー・感想・評価

バイオレンスアクション(2022年製作の映画)
2.2
詳細ロングレビュー
https://lociepatay.hatenablog.jp/entry/2022/08/28/VAmovie


まあーひどい作品。

ふわふわしている女子大生(専門学生)が実は殺し屋でひょんなことからヤクザの抗争に巻き込まれてさあ大変というのが今作のストーリーだが、女子大生の日常、殺し屋、ヤクザ......どこを切り取っても全部"それっぽい雰囲気”を漂わせるだけ。

おそらく今作は『ザ・ファブル』+『今日から俺は』のような作品を目指したのだと思う。本格的なアクションとコメディの融合をして、よりPOPで若者にウケるような感じでみたいなオーダーがあったのではないか。

ただ、そのために『バイオレンスアクション』という作品を使うのは完全に悪手である。

例えば殺し屋が一般人として暮らそうとする『ザ・ファブル』や、大人の殺し屋として社会に適合しなければいけなくなった『ベイビーわるきゅーれ』は殺し屋が一般人の日常に混じる違和感が物語の起点となる。一方原作漫画の『バイオレンスアクション』は20歳の専門学生が淡々と殺しをする様子を描いているので、殺しの世界に一般人の常識を持ち出す違和感が起点となっている。

要するに、出口は一緒でも入り口は異なるのだ。 ここを見誤ったことが今作にチグハグな印象を与えてしまう一番の要因なのではないか。


かといって、アクションやドラマも決して良くはない、というかひどい。


”ボリュメトリックキャプチャ”というソニーが開発した新技術を日本で初めてつかいアクションを撮影した作品であることを謳っているわりにはその場面が数分もないし、橋本環奈がアクションに挑戦!って話題になってるけど、まともに映ってるの動き出しと終わりのポーズだけだからね。後は異常に多いカット割りやスローモーションで動きを誤魔化したり、雑なCG(たぶんわざと)で高速移動したりスーパージャンプをしていたり......


これ見て橋本環奈がアクションやってる!すげえ!ってなる人いなくない?


アクションはじっくり見せないくせに、SONYのワイヤレスイヤホンを着けるくだりはじっくり時間を掛けて映すのとかも気持ち悪い。

ドラマ部分に関してもかなりひどい。というかドラマがない。例えば、主人公のケイが昼間は専門学生で夜は殺し屋というのもただそういう設定というだけだし、ヤクザ周りにおいても状況説明だけ。

説明はしているからキャラクターの行動原理はわかりますよ。でもこの人とこの人はこういう関係で、この人がこういうことをしたからこんなことが起きますという説明をしているだけで、そこに人間味が一切ないし全ての出来事に「はい、そうなんですね」以外の感情が浮かばない。

これなら原作通りに短い話が連続するオムニバス方式にするか、潔くダリアのエピソードとかはカットして一つに絞るとかしたほうが良いのではないか。


そしてセクハラ描写。

「セクハラは駄目だということを伝えるためのセクハラ描写」ではなく「セクハラ描写を正当化するためにセクハラは駄目だと言わせる」になっているのが最悪。

とはいえ、これらの駄目要素が全て脚本や監督のせいというわけではない気がする

本当のところはどうなのかというのはわからないのであくまでも憶測だが、すごく色々な方面からの声が入っているんじゃないだろうか?




『ザ・ファブル』がヒットしたから、うちはボリュメトリックキャプチャを使った本格アクション映画にしよう!そこに福田雄一作品みたいなコメディ要素を入れたら大ヒット間違いなし!でも予算はこれしか出せないからその中で頑張ってね!主演は集客力もあって可愛い橋本環奈で!ゆるふわ女子大生の日常なんだから恋愛要素もなくちゃ駄目でしょ。最近流行ってるBLも入れればいいんじゃない?LGBT?とか流行ってるし。じゃあ監督、よろしくね! あっそうそう!SONYのワイヤレスイヤホンの宣伝も忘れないでね!


みたいなね。


あくまでも商業映画で、監督主導の企画ではないにしてもここまで意思のない作品を見せられると邦画に未来が見えずガッカリしてしまうよ。
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