借り暮らしのアラサッティー

はい、泳げませんの借り暮らしのアラサッティーのネタバレレビュー・内容・結末

はい、泳げません(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

頭空っぽ系かと思いきや、思いっきりテーマのある映画だった。

最初対人関係がよく分からなくて、???ってなったけど
途中からは、しっかりのめり込んで見ることができた。(恋人のような存在をはっきりとした関係性でもって冒頭に描いていないせいかも)

綾瀬はるかとハセヒロの両方の成長物語なのかと思ったけど、ハセヒロが比重多め(タイトルは完全にハセヒロだからそんなもんか?)

麻生久美子が、サバサバしてるのは元の性格なのかなと思ったけど、そんなことはなく。愛息子を亡くしてから必死に前を向こうとして生きているだけで、遺品を見るだけで、涙が出てきて。本当は辛いし、きっとその辛さが消えることはないけれども生きていくというシーンは感情移入してしまい胸が痛かった。

一方で、ハセヒロは5年前から時が止まってて、前にも後ろにも進んでいなかった。だから、子供の死についてもはっきりと認識できずにもがき苦しんでて。
そんなハセヒロだから、前にも後ろにも進むのではなく、上に向かって無心で泳ぐ必要があったんだなあと。

前にも後ろにも進めず、もがいて溺れそうになって、泳げなくて立ち止まったりして苦しむ姿はまさに人生を上手く泳げていないことを暗示しているのかなと思った。

所々の演出が、今まで見た映画にはない手法ばかりで、何度もハッとさせられた。

貯金箱を拾うシーンで子供を抱きしめるシーンは、5年前に足並みが合わなかった夫婦がようやくハセヒロが泳げるようになった(死を受容した)ことで、一緒に泣くことができるようになるという切ないけど、前を向いていくことへの転換点となるシーンになっていて胸が熱くなった。

坐禅を組むシーンも、日暮くんとの会話も、一つ一つがピースになってて、ちゃんとしっかり見るとより言葉の重みや、ハセヒロへの解像度があがっていった。

頭空っぽで見れる映画が好きだけど、こういうじっくり向き合う映画も好きだな。

水泳は心のリハビリ。