かーり長文

雄獅少年/ライオン少年のかーり長文のネタバレレビュー・内容・結末

雄獅少年/ライオン少年(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

中国のなんかすごいアニメということで、羅小黒戦記みたいのかなーくらいな感じで観た。
最初少女チュンがしゅしゅしゅーってお小遣いを取り返してくれるので、獅子舞を題材にしたアクション映画かとおもった。
獅子舞競技ってものが本当にあるんだろけど、ほんとにこんな動きができるのか?どの程度リアルなのか?とか考えてるうち、獅子舞のリアルよりも、チュンとかマオは記号的に田舎の冴えない少年なんじゃなく、これは中国の現実(設定はちょっと前の時期かもだが)なのかと気づいて、
でもこれで紆余曲折がんばって優勝しましたーって話なのか?それだと現実を取り上げつつも映像がきれいなだけの作品だなあ、と思ってたらそっちか!っていう心折れる展開。やっぱり現実。
18歳だから家族を支えて働く。
獅子舞の訓練描写ではそんなに変わってなかった体つきも、肉体労働でちょっと筋肉ついてる(ように見えた)。現実。。
そして再会した少女チュンは車持ちの金持ち都会っ子。名前が同じだからって運命でもなんでもなく、ただ優しい人。文字通り住む世界が違いすぎる。ひー!現実ー!つらい!もうやめてくれ!
仕事仲間の稼げる話にのってさらにヤバいことが起こるのか!?とハラハラしたけど、ここからはクライマックスへの布石でよかった。ふぅ。。

獅子舞と決別して上海に行くとみせかけてまあ大会には出るんだろうけど、ギリギリまで焦らされてからの登場は最初の少女チュンくらい彩やかでかっこよかった。
そうそう、こういうシーンがたくさんある映画かとおもったんだよ!
でもここに描かれてたのは、獅子舞のリアルすぎる、いやもう獅子頭という作り物をこんなにきれいに映像化するなら獅子頭だけ実写でもいいのでは(どういう映像?)というくらいきれいな獅子頭の非現実的なほどのリアルさと、明らかアニメ造形の人物の嫌になるような現実。
三度再会した少女チュンはこれまたいかにも都会っ子の彼氏持ちであることが発覚。何でも持ってんな少女チュン!つら!
でもこれでもはや完全に動機が色恋ではなくなる。少女チュンが見てるからじゃない。いいとこ見せたいからじゃない。
前半で半分壊された獅子頭、ここで、獅子頭とチュンの重なりを表すのに生きてくるとは。しかもポスターの絵じゃんこれ。よくある「中の人」が透けて一体感を表現するやつじゃなく、馬鹿にされて壊されて直してこれしかなくてボロボロに半壊した獅子頭から覗く今のチュンの顔。
さて、もちろんあのてっぺんに挑戦するんだろうけど、成功するのかしないのか。
山王戦のラストシュートが入るのか入らないのかくらいの展開への緊張。
どっちだ。どっちの展開が見たい?どっちの展開なら納得がいく?どっちの展開ならどういうラストシーンになる?
大会映像が小さな荒いテレビ画面に切り替わる。どっちだ。よく見えないけど人が落ちたぽい?成功しなかったのか…?

そしててっぺんの獅子頭どん!
ウワーッ!
そしてタイトルとサブタイトルどん!
I AM WHAT I AM!!
ウワーーッ!!!
そんなサブタイだったのー!ウワーッ!
(タイトル出た流れはわかんないけど感覚としてはこう)

ラストのラストはどっちかわからなかったけどあれは結局上海で働いてるのか?いや仕事仲間は切符破ってたしな。進学したのかさほど危険じゃない仕事につけたのか現状はあんま変わってないのか?
現実。でも、地元でヘラヘラしていたあの現実とは、あのままでは得られなかった、たぶんあの時とは違う場所には来れている。少なくともひとつは成し遂げてそこにいる。
田舎の少年が一念発起して努力して周囲を見返すという今まで何度も見たようでいて、アクション映画ともスポ根ともサクセスストーリーとも違う、チュンの物語。
そして中国の現実。とんでもない格差。でもここで描かれた現実とままならなさは、逆に日本でこれから待ち受けるものではと思ったりもした。

てっぺんに飛び移るときあんなリアルライオンじゃなくて、あの獅子舞でよかったのでは。シーサーみたいなやつで。森の仏像前にライオンのシーンはまあよかったけど急にインド感あった。
あと他の獅子舞やってる人たちいやなやつばっかりだな?黒チームはめちゃいじめてきたくせに最後は仲間感出してきてなんなの?
…とかはあったけど、全体的に、観てよかったなあ!

YouTubeで「獅子舞 Liondance」を検索してみる。
まじであんな獅子頭つけてポール飛び移ってんのかい!すげーな!
屈強な人たちがすげー身体能力披露しながらネコ科の可愛さ表現にも全力で、とてもよい。