dalichoko

エノーラ・ホームズの事件簿2のdalichokoのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

Filmarksのレビューで前作の自分の記録を見直したら、キャリー・マリガンの「未来を花束にして(原題:Suffragette=参政権)」のことが書いてあって、なるほど今回みたエノーラの続編も、モロにあの映画の時代と重なっていて学びがあった。20世紀初頭はまさに工業化の裏側で、奴隷のように働かされた権利(例えば参政権)のない女性の悲惨な現実があって、この映画の軸もそこに据えられている。

このシリーズを監督するハリー・ブラッドビアは、ジョン・シュレジンジャーのアシスタントを経験したキャリアを持つ職人だ。彼のキャリアにこの映画の持つ政治性のようなものがどこまで反映されているかわからないが、間違いなくいかにもイギリス人らしい辛辣な政治批判がこの映画に貫かれている。行方不明になった依頼人の姉はマッチ工場で働く女性労働者のひとり。もうこのあたりから「未来を花束にして」のモチーフが重なる。

対してエノーラもまた前作で行方不明の母親を探す過程で、女性への蔑視や政治参加に対する障害など、現代に通じる社会問題を重ねている。そしてエノーラの逆さに読むと”Alone”。この孤独な少女を支える兄や幼馴染のデュークスベリーなどが支える展開。冒頭でエノーラが警察から逃げ惑うシーンから興奮する。

工場で酷使させられる女性労働者の実態と、政治の汚職が複雑に絡まり合い、兄シャーロックが追いかけている事件とエノーラが依頼された事件とが重なり、その中心になんとモリアーティが存在することが明らかとなってさらに興奮する。モリアーティは果たして誰か?そしてこの疑獄事件を影で演出した首謀者は一体誰か?

エノーラたちがピンチになったとき、なんと彼女を刑務所から強引に(壁を爆破して)救い出す母親もまたすごい。エノーラの母親と黒人のお手伝いの女性がたくましく、エノーラを支える。このあたりの展開や最後の対決シーンなど、今回はアクションシーンの演出がよりエスカレートしていて見応えがあった。

そして女性と人種の問題が深く掘り下げられていて好感が持てた。もちろんドラマの中でそのことは直接表現されていない。しかし意外な人物の存在など、ありとあらゆるモチーフが原作を大きくデフォルメしていて、後半は驚きの連続だった。

とてもじゃないが、オチをここに書く勇気はない。ご覧になってからのお楽しみだ。
dalichoko

dalichoko