はるか

私は世界一幸運よのはるかのレビュー・感想・評価

私は世界一幸運よ(2022年製作の映画)
4.6
加害側の性質を持った人間と
性被害の当事者や知識と想像力のある人間とでは
この作品への解像度がかなり異なることは
他のレビューを見ても明らか。

銃乱射事件なんかの話ではない。
レイプサバイバーの話。



最近、元自衛隊員が職場でセクハラに遭ったことを会見し加害者に謝罪文を提出させたが
彼女のSNSでは事件を揶揄したり彼女自身を責め立てたりと
卑劣な蛮行を矮小化させるメッセージが少なくない。

きっとこの人達とは見えている世界が違う。
自分よりも大きく筋肉量もあって力では到底及ばない人間から性的に弄ばれることの
恐怖や屈辱、怒り、絶望、私の語彙では表現できないこの世のどす黒い感情すべてを当てはめても収まらない気持ちを
微塵も想像できないのだろう。

よくもまあそんな被害者に
そんな仕打ちができたものだ。


この作品でも
銃乱射事件の犯人だと噂される、最悪な形でのセカンドレイプがある。

母親でさえ寄り添わず、アバズレ扱い。
そんな環境で上手く適応し生きてこれたミラクニスは強い。
自分を押し殺して生きやすい生き方を選んで婚約したことも、何も悪く無い。
本人は傷を認めることこそ真の強さと定めていたけれど、十分強い。

事件への認識が浅い人間は
婚約者のように思うだろう。
「昔のこと」
「克服したと思ってた」
それはそうだ。被害者本人もその傷を認めたら痛くてつらくて苦しいから。見ないようにしていたし、他者には傷すら見せないように振る舞っていたから。

それでも
当事者でない人間が
心の傷を軽視することは絶対にやってはいけない。
それは当事者本人を軽視していることと同義。


最後のように
名前と顔を出して告発出来る人間なんてごくわずかだろう。

実際に、元自衛隊員の方や元フリージャーナリストの方が世間からどんな心無い言葉を言われているか実際に目にしてきた。
私に出来る事は、そういう人に寄り添って連帯し支援することしかない。


彼女の未来が明るいことを願う
はるか

はるか