Masato

HUSTLE ハッスルのMasatoのレビュー・感想・評価

HUSTLE ハッスル(2022年製作の映画)
4.3

雇い主の恩師が逝去し犬猿関係にある恩師の息子がチームの運営者になったことによりキャリアが破綻寸前のスカウトマンが、スペインで類まれな才能を持つストリートボーラーに出会うことから始まる落ちこぼれ同士のスポーツサクセスドラマ。

アダム・サンドラー主演。と聞くといつものくだらんコメディかと思うが、アンカットダイアモンド以来の高水準な映画。映画内でも言及されている通りバスケ版ロッキーのようなスポ根でありながら、アダム・サンドラー節のコメディが暑苦しくなるような雰囲気を和らげていて逆に清涼感すらある。広く親しみやすくて非常に素晴らしかった。

NBAの小ネタ(主にカメオ出演)が多かったり専門用語があったりしてNBA知らない人は最初こそとっつきにくさはあるかもしれないが、進んでいくほど誰しもが感動できる物語へと変容していくので是非見てほしい。

過去には大失敗、スカウトマンとしての才能は右に出る者はいないが現在キャリアは破綻寸前の男、そしてスペインで母親と娘を必死に養いながら、バスケの才能はあっても見出されずにストリート止まりで羽ばたけずにいる弱冠22歳の青年。この二人の関係性が素晴らしく良い。

ストーリーは分かりやすすぎるくらいに王道だが、キャラクターの魅力で推し進めていく力があり、作り手もそれを分かって作っているからこそのアダム・サンドラーなのが最大限に活きている。スカウトマンのスタンはどれだけ不利な立場でも自分を捻じ曲げずに屈しない。そして軽口を叩くお調子者。愛すべき人にはとことん愛を注ぐロマンチックな男だ。

対する青年ボー・クルスも家族想いで田舎から上京してウキウキしている学生みたいな純粋さを持っていて非常に愛おしい。実際の選手が演じているとのことだが、だからこそあまり過剰な演技はみせず素朴な演技がかえってリアルで素晴らしい。

人へ無償の愛を注ぐ様は否が応でも感動する。スタンは他者への助けに犠牲を厭わない。それは自分のキャリアや守るべき存在のためでもあるが、それ以上に献身に意義や歓びを感じている。まあそんな人に悪いやつはいない。

スタンはこれまでになくボーに愛を注いでいくことで彼を覚醒させていく。対するボーは今まで自分を無視して家族を想ってきたが、周囲の助言からバスケにとことん集中し自分を解放し己を律したことで自分への労りを覚えていく。他者への献身的な想いが二人を繋ぎ合わせて足りなかったものを手に入れ、絆を確かなものとしていく。まるで親子の関係。献身こそ人の最たる行いであると思うので、そこにフィーチャーされていたのは良かった。


まじ煽りは全部選手の声を集音しておいてペナルティ違反とかにしてほしい。あんな煽りして殺さない人のほうがいない。俺ならとっくに死なない程度に殺すくらいの行為してる。
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