まぬままおま

老人と情景のまぬままおまのレビュー・感想・評価

老人と情景(2020年製作の映画)
3.0
死する老人と自分の世界に閉じる孫を繋げたものは音楽であった。しかもEDM。

おじいちゃんが音楽を聴いて、エンパワーメントされる様子は素直によかった。

ただ自分が病気を患ったり、老いていき死が目前に迫った時、元気になる音楽はEDMなのだろうか。EDMのアップテンポなリズムに乗れないしんどさが必ずあるように思う。

もうひとつ気になるのは、老人にすれば娘、青年にすれば母のケア行為を無下に扱っていることである。
娘のつくった食事を食べないことで、病気のしんどさを描きたいのだろうけど、あまりにも娘が老人のために食事をつくることが当たり前とされている気がする。
また青年が老人をクラブに連れて行き、酒を飲ませる行為は、生のエネルギーを放出させ、元気づけるということで肯定的に評価はできる。
だがクラブから帰宅して、青年が母に老人をクラブに連れて行ったことを怒られるのもよく分かる。生の発出は同時に死とも隣り合わせであるから、青年は死ぬ可能性を一切考慮していないのである。だから毎日、おじいちゃんが死なないようにケアをしている母に怒られて当然であるし、母のケアに一切配慮がないのである。