chunkymonkey

Good Luck to You, Leo Grande(原題)のchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

3.5
エマ・トンプソンの衝撃的な脱ぎっぷりで話題沸騰中(というかテレビなどで本人自らめちゃそこばっかり話を振ってる...)のこちらの作品。妻でも教師でもなくなり足かせがはずれ心を解放して混乱する初老の女性と心を閉ざし平静を装うセックスワーカーの若い男性の交流(セッション)がほぼワンシチュエーションの静かな会話劇を通して美しく描かれます。

全く異なる二人のどちらの属性をみても、自分に当てはまるところは何もない。にもかかわらず、どちらの人物にもあら不思議と素直に共感ができる。もし、自分がその立場だったら彼らと全く同じように振舞うだろうと思わせる自然な脚本が圧巻です。

まずはエマ・トンプソン演じるナンシー。初老を迎え、教師・母・妻としてきちんと生きてきたつもりの自分に対する大部分の嫌悪と少しの誇りが入り混じる複雑な感情がすっと入ってきます。自分を縛るものがないことに気づき心を解放し、あるべき自分を求めて自分を見つめ直しもがく姿は誰しもが共感できる。

一方、セックスワーカーのレオ。不安や戸惑いを何のためらいもなく正直に話すナンシーを前に、プロとして冷静さを保ちながら彼女の解放を手伝おうとします。しかし、感情あらわであまりに率直に葛藤する彼女に動揺し「そういう自分こそ正直に生きているのだろうか」と不意を突かれる様が刺さります。

ありのままの自分を直視し認めて、自分のために素直に生きる。言うは易しですがどれほどの人がそうできているでしょうか。ほぼ相互心理カウンセリングみたいな本作。設定的には興味がなく、というかどちらかというと嫌だなと言う感じでスルー予定だったのですが、とても評判がよいので挑戦したところ、鑑賞後は心が洗われるような気持ちになれたので観てよかったです。
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