コマミー

大いなる自由のコマミーのレビュー・感想・評価

大いなる自由(2021年製作の映画)
4.0
【自由はどこにある?】


※fans voice様のオンライン試写会にて鑑賞






"刑法175条"……ドイツ統一後の1871年5月15日に制定され、ドイツ再統一後の1994年3月10日まで施行された、"男性同性愛を禁じる"規定の事である。だが、東ドイツではこれにドイツ共産党が反対していた為、1950年に東ドイツでは削除している。

そんな刑法175条に立ち向かった"ハンス"という囚人の獄中での"密かな愛"の物語となっている。
そしてこの物語を通して、ハンスにとって本当の自由いわゆる"大いなる自由"とは何なのかを感じ取る作品となっている。

ハンスと最初は"対立的な関係性"だった"ヴィクトール"が"次第に惹かれ合う"姿は、「ショーシャンクの空に」のアンドリューとエリスを想起して自然と涙が出た。というか、アンドリューとハンスの"圧力への立ち向かい方"が非常によく似ている。
エリスとヴィクトールの世間の見方も非常に似ていて、「塀の外には"居場所"がない」というセリフも共通してるなと感じた。

心を打たれたのはやはりラスト。ここにハンスにとって「何が自由なのか」の答えが出ていたように感じられる。
175条が撤廃(正確には1994年に撤廃。東ドイツでは既に削除)され、自由の身となったハンスがとった行動が、本当に胸打たれた。

そんなハンスを演じた"フランツ・ロゴフスキ"の佇まいが美術品のようで美しい。極めて繊細な表情と動作ができる俳優さんだなと感じた。ダンサーだった事も関係するのだろうか?

本作を日本に届けてくれたBunkamuraさんには感謝を贈りたいし、マイノリティを意識する今だからこそ観てほしい作品だった。
同性愛への世界的な意識についてはまだまだ改善が必要だが、そんな人達が確かな愛を掴める社会になってほしい。

その参考として、本作を皆さんにオススメします。
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