柿トマト

大いなる自由の柿トマトのレビュー・感想・評価

大いなる自由(2021年製作の映画)
3.0
同性愛とは、ちょっと違うもの

かつて存在したドイツ刑法175法によって、同性愛が禁じられていたドイツ。その刑務所を舞台に、同性愛者のハンスと同房となり関わりを持つようになったヴィクトールという2人の男の20年余りの友情を描いた本作。本作は1945年、57年、68年という3つの時代を行き来する構造となっている。

冒頭1968年、ハンスは同姓愛者の刑法により刑務所に移送され、そこでヴィクトールと再会する。そこでお互い「おう、またか」みたいな気軽な挨拶を交わす。

そこから1945年、ハンスが初めて刑務所に移送された時のことが回想される。ハンスはそこでヴィクトールと同じ部屋になる。初めは普通の同居人という関係性だったが、ヴィクトールはハンスの罪状が「ドイツ刑法175法」と知るや否や態度を豹変。「変態」だと罵りしハンスを突き放す。しかし、ひょうんなことでハンスの腕に「数字の入れ墨」を発見してしまう。第2次世界大戦時のナチスによって収容所で非人道的な扱いを受けてきたことを察したヴィクトールは、次第にハンスに対して態度を軟化。心を解いていき、それから20年余りの月日を追いかけていくという物語だ。

3つの時代を通じてハンス、ヴィクトールの人生を追いかけることになる本作。派手な展開や、スペクタクルな何か…があるわけではない。ただ静かに、ひたむきに彼らの姿を追う。ハンスのあらゆる規律に反抗する「自由」、ヴィクトールの刑務所内で上手く生きる「自由」。相反する2人の自由が最終的にどのような結末をもたらすかを鑑賞する作品となっている。

それに本作は「同性愛」映画だから素晴らしいのではない。これは本作のテーマ「自由」に対するパーツとして同性愛が謳われているだけで、これを楽しみにされて鑑賞すると少し拍子抜けしてしまうかもしれない(該当シーンがないわけではないが…)。よって、従来のポリコレ的な主張とは一線を画すものになっているように感じる。
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