木蘭

大いなる自由の木蘭のレビュー・感想・評価

大いなる自由(2021年製作の映画)
4.0
 愛するが故に法を犯して囚われてしまった男達の物語を通して、戦前からつづくドイツの同性愛男性への差別と男達の友愛を、1947年から1969年までの約12年毎3つのタイムラインで描く。

 感情を殺されてしまった様な主人公を取り巻く環境を淡々と描き始めるが、徐々にエモーショナルな描写が加わり、最後は何処かファンタジックな物語に昇華する。

 ほぼ刑務所内で展開される囚人モノ映画なのだが、暴力的な描写は少ない分、男性の剝き出しの肉体や性器、露骨な性描写がドイツ系映画のリアリズムで映し出されるので、生理的に苦手な人は辛い・・・。
 ただ体当たりで演じた俳優達に報いる様に、一切無修正なのは喝采もの。レンタルや配信では修正が入ってしまうかも知れないので、劇場で観るべき。

 男性異性愛者の自分としては、生々しい(しかも無味無臭とは言い難く、臭いが想像出来るような衛生状態の)男性の肉体や性行為もさる事ながら、男が女性以外に弱さを見せたり見せられたりする姿には嫌悪感を抱いてしまうのだが・・・
映像や音楽、舞台設定や人物造型から描写に至るまで、実に丁寧に計算され良く出来ていているので、当時のドイツの状況が分かる学びがあったと同時に・・・男として胸にグッと来る物が在った。

 素晴らしい作品だった。
木蘭

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