のんchan

大いなる自由ののんchanのレビュー・感想・評価

大いなる自由(2021年製作の映画)
4.5
どんなに心待ちにしていた作品だったか...
ゲイと刑務所、これはまた私の中で重要、興味が尽きないテーマです。自分の中の鮮度を大切にしたかったので、上がったレビューはチラ見程度に留めておきました。

大大大満足!!!!!
なのですが、なんと行くまでの交通事情があり、冒頭の絶対的に大切であろう部分を7〜8分見逃してしまいました😭(観た方から詳しく教えてもらって理解しました)もう一度行こうかな?


舞台の殆どが第二次世界大戦後のドイツの刑務所。
刑法175条(男性同士の性行為禁止)により、ハンスは自身の性的嗜好を理由に何度も投獄された。
終戦後の1945年、愛する恋人オスカーと共に投獄された1957年、そして1968年の3つの時代が交錯する20年余り。

同房の殺人罪で投獄されたヴィクトールは、175の番号のあるハンスに嫌悪感を露わにし遠ざけようとしていたが、長い間に2人はまるで兄弟のような絆が生まれる。ヴィクトールの無骨な優しさが男っぽくて良いし、ハンスの真っ直ぐな気持ちは清々しい。

時折り挟まる若かりし頃のオスカーとの戯れの思い出が8ミリカメラで演出され、そのキラキラ感がヤバイ。オスカー、めちゃくちゃ美形✨

その後、刑務所内で出会った教師だというレオ。障害のある恋だからこそなお美しい。その関係も丁寧に紡がれる。

大きくは、ハンスが1994年に刑法撤廃されるまで自身を偽らずに前向きで生き抜いたこと。そしてヴィクトールとの何とも言えない男同士の友情が芽生え労りあったこと。そこを軸にし、暗く辛い絶望感の中にありながらも、落ち着いた青みがかった映像、光(マッチの火)の効果により温かみを醸し出す。
とてつもない緊張感の中で貫く愛、かなぐり捨てる羞恥心、衝撃的でかつ刺激的な描写も多い。

ちなみに今作は歴史的説明がほぼされないので、補足的に『エルドラド・ナチスが憎んだ自由』をご覧になることをお勧めします。
そちらも素晴らしい歴史ドキュメンタリーです💫

刑務所内でふと目にした雑誌に"175条刑法改正"と知るハンス。
出所して向かった先は夜の盛り場。望んでいたはずの自由。しかし、自分の中の大切なものは何故か見つけられない...
ラストの驚く行動と画になるショット、今後もずっと頭の中に残るだろう。
これが"大いなる自由"なのか?うちのめされたままEDへ


ハンス役フランツ・ロゴフスキは何作か観ているが、俳優であり、ダンサーで振付師だったとは?だからあの筋肉質の美しい身体のラインなのね。彼が演じたからこその妖艶さ、抑制の効いた演技が素晴らしかった👏

またオーストリア出身のゲオルク・フリードリヒ。ガタイが良く無骨な印象。ドラック依存症で苦しむ姿。ハンスへの愛情は不器用ながら痛々しくも一本気。2人の相乗効果が活きていた。


これぞ観たいと望んでいた内容だった。
長い年月を経てようやく多くの国が同性婚を認めているが、日本はG7加盟国の中で唯一遅れをとっている。ドイツをとやかく言えたものではない。
人が人を愛することに、性差別があってはならない。
束縛された状況からの自由、全ての人間が享受されるべきだろう。

大切に今後も観続ける作品になった🌟
のんchan

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