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大いなる自由のumisodachiのレビュー・感想・評価

大いなる自由(2021年製作の映画)
4.6

同性愛が違法だった時代に何度も収監された男を描く。フランツ・ロゴフスキ主演。

第二次世界大戦後のドイツ。同性愛者のハンスは同性愛のための逮捕される。同室のヴィクトールはハンスが同性愛者だと知り嫌悪するが、ハンスの手首に焼き印があるのを見て……。


戦後から1990年代にかけて何度も収監されるハンスを通して、愛する自由を問う作品。

時系列が行ったり来たりするのに、刑務所内という背景は変わらないので混乱しそうだが、ハンス役のフランツ・ロゴフスキが魔法のように老けたり若返ったりするので(どうなってるのあれ)、迷子にならずに物語を追っていくことができた。

相手が同性であるというだけで、あらゆる性的行為が許されない理不尽。心から愛する人と一緒にいることすらできず、ハンスは何度も何度も傷つき絶望する。

暗闇を効果的に使った映像演出で、レンブラントの絵画のように人物に光を当てていくのが印象的。刑務所という閉鎖的な環境で自由とを求めてもがく人間の姿を、一筋の光で照らしていくのは美しく説得力があった。(基本的に画面がずっと暗いので、映画館以外で観る場合は視聴環境に気をつけた方がいいかもしれない)

何度も刑務所を出たり入ったりするハンスをずっと見守る存在として登場するヴィクトールも印象的。彼は刑務所に滞在し続けている初老の男で、同性愛者ではない。しかし、ハンスとの間には確かな絆がある。

逆境で育む運命の愛というタイプの映画かと思って臨んだのだが、そんなシンプルなテーマではなかった。人間が生きていく上で必要とする愛や自由について、もっと深く考察した作品。
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