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大いなる自由のpepoのレビュー・感想・評価

大いなる自由(2021年製作の映画)
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ナチスや戦争の記憶が生々しい1945年の背骨の浮いたガリガリの痩躯、「外」での生の歓びの気配を曳いた1957年の不屈、そして刑法改正の報を知ることになる1968年には友との関係性の、庇護や保護の割合にも変化が生じていく...
3度の収監に応じた役作りの凄まじさに息を詰めて見入ってしまった。

戦後も連綿と続く差別と抑圧(ヴィクトールの収監された理由の背後にも「戦争」が彼に植え付けた有害性があるのかも)のなかで、作品としては人の普遍の脆さや男性同士の “ケア”にも触れながら、一貫して自分を曲げることのなかったハンスの半生が描かれる。

自由とは何だろう。

刑法175条が撤廃されるに至ってスクリーンの中の“歴史”は現在に接続され、“今の位置”を意識せずにはいられなかった。
2023年、私達の自由の状態はどうなのか?(多分その問いへの導きとして刑務所の監視構造や窃視、盗撮などのモチーフが隠喩的に重ねて取り入れられているのだろう。)
様々なジェンダーへのバックラッシュは勢いを増していて、せいぜい、てらいなく胸を張るのが憚られる程度にはまだ情報が制限されていない段階 ─── というところかも。
檻の外に未だ世界がきちんと築けていない自由が、けれどもハンスの中には確かに在った。
何度拘束されどんな暴力に晒されてもゲイである事を恥じてみせたり人を愛する事を諦めたりしなかったハンス。
Great Freedomは個人が日々尊厳を守ろうとするそれぞれの戦いの中にしか存在し得ないのかもしれない...
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