シネラー

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Societyのシネラーのレビュー・感想・評価

4.5
「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズ第3作、
初の長編OVAで後に3D劇場公開された
本作を再鑑賞。
個人的に「攻殻機動隊」のアニメでは
一番好きかもしれない作品であり、
その社会的問題にシリーズらしい
結末がとても好みだった。

物語としては
"個別の11人事件"から2年後、
草薙素子が去ってトグサが率いていた
新生公安9課だったが、
"傀儡廻"と呼ばれる
謎のハッカー事件に直面し、
その嫌疑が素子にもかけられていく
内容となっている。
少子高齢化に児童虐待といった
現実でも大きな問題であるテーマを
見事なバランスで描いており、
全自動介護システムが一般的となって
高齢者の寝たきりが助長し、
政府が遺産を体よく回収して
子どもすらも拉致するSF世界は
本作だけであって欲しいと心底思った。
謎の存在である"傀儡廻"に関しても、
その正体は電脳化された世界での
不確かな綻びのように感じられて良かった。
物語を締め括る素子の
「ネットは広大だわ」という
押井版へのオマージュは、
"もし草薙素子が人形遣いと出会わず、公安9課に残っていたら"という
コンセプトで始まった本シリーズが
収束したと感じられる結末で良かった。
アクション場面に関しては、
公安9課のサイトーの狙撃場面が格好良く、
9課へ舞い戻った後での素子や
タチコマの活躍もそれまでの状況からの
反転攻勢が感じられて頼もしかった。

残念な点としては、
激しい戦闘シーン自体は少ない為、
アクションを求めると物足りなさがある
内容ではあると思った。
又、"傀儡廻"の正体に関してだが、
序盤での素子との邂逅で素子自身は
その存在をどう認識していたかは
気になるところだった。

広がり続けるネットのコミュニティに
新たな存在が生まれているかもしれない
という危惧や現実社会への
悪しき未来への警鐘を感じさせる作品であり、
社会的で面白い長編で大好きな内容だった。
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