アニマル泉

夜ごとの夢のアニマル泉のレビュー・感想・評価

夜ごとの夢(1933年製作の映画)
4.2
成瀬巳喜男のサイレント。松竹蒲田作品。片岡一郎の活弁上映。栗島すみ子はカフェの女給をしながら女手一つで息子を育てているが別れた亭主(斉藤達雄)が帰ってくるという物語だ。トラックイン、そのリフレインやカットバック、あるいはフラッシュモンタージュ、字幕の強調などアグレッシブで若々しい。子供の事故や父の犯行そして身投げのくだりは荒々しくフラッシュでカットや字幕がモンタージュされる。ただし事故や事件の「その瞬間」は見せない。成瀬は足が好きだ。足フォローが頻出する。
狭い部屋の場面が多い。窓が重要だ。窓辺に座る、奥に人物が座っている、ドンデンに切返して奥の座る人をシルエットに手前ごしにして窓辺に座る人物を逆光気味に撮る。このパターンが多い。狭い空間でどうやって引きじりを作るかの技法だ。窓の外からのフレームショットがマスターショットになる。誰が窓辺に座り込むか?に着目すると面白い。窓辺ではなくとも「座り込み」は成瀬の主題だと思う。ステージングは互い違いに手前と奥で座る場面が多い。小津は同方向を向いて並んで座るショットが多いが、成瀬は互い違いになる。
成瀬は海がいい。本作でもラストの悲劇まで海が重要な場面になる。鏡ショットも多用する。狭い室内で鏡は有効だが、女が身なりを整えるアップは要所で効いている。カットをダブルアクションで場面転換するモンタージュも多用される。例えばボールを上に投げると同じアクションの草野球のボールに繋がれて場面転換する。あるいはオモチャの自動車が机から落ちて子供の事故へ繋げる。
俯瞰ショットが気になる。帽子が印象的。シルエットも多用される。干された洗濯物がいい。
ヒロインは栗島すみ子。斉藤達夫、飯田町子、坂本武といった小津組が周りを固めている。
アニマル泉

アニマル泉