三隅炎雄

波止場の賭博師の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

波止場の賭博師(1963年製作の映画)
4.2
石原裕次郎の代表作『夜霧よ今夜も有難う』と共に『カサブランカ』を下敷きにしたもう一つの日活ムードアクションの秀作。
キャバレー経営の裏で、組織に追われる人間を海外逃亡させる「逃し屋」小林旭の元へ、かつての恋人高須賀夫至子と暗黒街の男小高雄二が助けを求めに来る。浅丘ルリ子でも笹森礼子でもなく、地味でどこか暗さのつきまとう高須賀夫至子がヒロインというのが重要で、人生裏目ばかり苦労続きの高須賀と小高の、海外へ行って一度でいいから自由に生きてみたいという願いのために、アキラが命を張る。味わったことのない平凡な生活をしたいという他人の夢に賭ける。
美しいが日常を引きずった高須賀の表情から始まって、ムードアクションと言うにはロマンチックになりきれない、くすんだわびしいムードが日活独特の人工美の世界に終始張り付いている。しけた調子で流れ続ける『ハーレム・ノクターン』。他人の平凡のために銃を手にするアキラ。そのアキラに忠誠を尽くし、言葉少なに散っていく井上昭文とかまやつひろしがいい。二人が画面に物寂しい花を添える。
クロード・レインズ役は白木マリ。白木をキツめのキャラクターで通しておいて、最後にすっと美しいその足をフレームにおさめた山崎徳次郎演出の繊細にアッとなる。
三隅炎雄

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