ダイナ

カリガリ博士のダイナのレビュー・感想・評価

カリガリ博士(1920年製作の映画)
3.8
1920年公開ドイツ表現主義の代表的サイレント映画。覗き穴から見させられているような映像はモノクロで絵画的かつ所々歪んだ背景美術、アグレッシブに訴えてくる字幕、壮大で不穏な音楽が相まった「非現実感」がイイです。夢遊病患者による連続殺人事件を語るストーリー、現代人にとっては新鮮味は感じないかもしれませんが、ちょっと待て100年前だぜと。使い古された描写も見られれば、昨今ではあまり見かけない実験的な描写もあったりと、現代の作品との違いを意識して観てみると面白いです。

第一次世界大戦(1914〜1918)前に始まり1920年代に最盛を迎えたとのことであるドイツ表現主義。ドイツ表現主義でググって読み漁った結果、めちゃくちゃ自分勝手に噛み砕いた感じで解釈すると、壮絶な社会情勢に対抗する姿勢を現行の価値観への反発(既成の芸術への反発)として現し、かつ外面的に現れない内面を表現したもの的な(正確性を欠くこの文章を信じる前に独自で調べること推奨)。なんとなくシュルレアリスムに近い匂いを感じます。第一次世界大戦終戦してから1〜2年後に制作されたという背景を込みで考えると、この不安定な雰囲気も当時のドイツの人達の心境の一片を表現していたのではと興味深く思えます。

多くの作品が本作の影響を受けているということで、ストレートに「あの作品これがルーツじゃね?」視点で本作を観てみるのが面白いですね。70分と短い時間ながら長く感じる部分も正直ありますし、リスペクト作が多すぎて既視感を強く感じてしまうものの観ておいて良かったと思える一作。
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