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カリガリ博士のALABAMAのネタバレレビュー・内容・結末

カリガリ博士(1920年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

この映画は1920年にドイツで製作されたサイレント映画である。夢遊病患者を操り、大量殺人を犯してきたカリガリ博士とその事件の解決に挑む警官や男、事件に対して恐怖を抱く民衆の心理的な動きを含めて描いたロベルト・ウィーネ監督のサイコホラー。多くの研究者が研究対象としてきた、いわゆるドイツ表現主義の代表的な作品。多くのアーティストに多大なる影響を与え、今なおその不気味さ、異様さは健在である。本作は人の記憶を中心に語られる。記憶に出てくる町並みは窓枠、柱、ドア、街灯など、風景全てが抽象絵画のように歪んでいる。歪んだ空間の中で人々は生活している。この異様な空間は作品全体に不気味さを醸し出すとともに、人の記憶の中という曖昧な空間という観方もできる。またこの作品は恐怖の描写も誇張表現されている。登場人物のメイクはまるで歌舞伎の隈取りのように派手である。顔は白く、目の周りは黒い。
ライティングも興味深い。登場人物が恐怖を感じる瞬間、または恐怖を与える瞬間は被写体の真下からライトを当て、顔を下から照らしている。このライティングは現在では最もポピュラーなホラー演出となっている。また殺人を犯すシーンでは、人を刺す動きを影で演出している。
カメラはカットの変わり目で登場人物の顔にアイリスを絞り、次のカットで別の人物の顔からアイリスを開ける技法を使っている。観客はその人物を注視するようになる。
『カリガリ博士』はサイレント映画であり、かつ字幕では多くが語られないため、動きとわずかな字幕で物語を類推しなければならず、ストーリーは分かりやすかったとは言えない。しかし、フレーム内の人物の緩急をつけた、誇張された演技は恐怖を感じるのに充分であり、最後のどんでん返しも非常に見事であった。映像表現の限りを尽くした大傑作。
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