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その消失、のSSDDのレビュー・感想・評価

その消失、(2018年製作の映画)
3.4
■概要
とある刑事はストーカー連続殺人事件を解決し、新たに模倣犯と思われるストーカー事件を調べていたが…体調に異変があり時折記憶が混濁するのであった…。

■感想(ネタバレなし)
まるでPVやCMのような演出が入るオルタナティブなスリラー。邦画ではあまりというか他の映画でもここまで過剰な芸術性というか、妙に小綺麗な映像を細切れに入れるのは観たことがない。

章立て構成も含めて、詩的であったり、主人公をハードボイルドなキメた映像を挟んだと思ったら、シャンプーのCMのような女性の映像を挟んだりとなかなか前衛的でそれ自体は悪くなかった。

ただ異様に凝った演出がテンポを阻害していて、ストーリーが頭に入ってこない。

抽象的な映像を伏線として時系列をバラバラにして見せていくため、綺麗なデイヴィッド・リンチでも目指しているのだろうか。

もう少しテンポを早めて、主人公のハードボイルド映像を減らせばかなり悪くない気もするのだが、とても不思議な作品に出会えた感覚は強いので満足感はありました。













■感想(ネタバレあり)
・記憶がない男の犯人探し
こう書くとメメントが浮かんでくるが、自己犠牲的な復讐方法をラストは全く異なる。そして自分の過去の軌跡を辿る形にどうしてもなるので逆行していくストーリーはどうしても一緒になる。

・デイヴィッド・リンチ
ストーリーの時系列バラバラにしてから組み上げ象徴的に観せ、時に整合性すら無視した芸術面を優先した見せ方に観客を置いてけぼりにする手法が悪夢のような作品として中毒性がある。
今回のはその抽象的な映像がMVみたいな、少し綺麗め過ぎるのでもっと退廃的で暴力的な映像にした方が良かったのではと思うが、必ず雨なのは良かった。
これはいじめの際のバケツの水を被せたり、水責めだったりを象徴しているという伏線になってるのはなかなか良い。

・復讐とツイスト
三人のいじめの実行犯の殺害後、主犯格が明らかになるがその主犯と結婚。
娘に忘れている妹の名前を付けることで一生、主犯の女には忘れさせないという重荷を負わすと同時に世間からイジメをした相手の兄と結婚し、夫は殺人犯になったというレッテルを貼るという生き地獄はなかなかのツイスト。ただ生まれてきた娘が可哀想。
しかも先に明らかになる主人公の死。
いじめで死んだ妹を約束も守れなかった自身も制裁対象だったという終わりは意外だった。

・総評
日本版デイヴィッド・リンチになり得る監督かもしれないという期待があるので是非今後の作品で怪作を産んでもらいたい。
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