バクチャン

今夜、世界からこの恋が消えてものバクチャンのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

前向性健忘の真織ちゃんは、同級生から唆された透くんから告白されて「まあこのまま付き合わないってのも何だし擬似恋人しようぜ!ただしお互い本気で好きになったらいけねえからな!」という恋人契約を結ぶことになる。でも真織ちゃんは一日しか記憶が持たないので毎朝日記やらメモを読みまくらないと日々の生活もめちゃ大変!そんな真織ちゃんの事情を知りながらも彼女に楽しい毎日を送らせるぞ!と奮起する透くんにもまた事情があって…という話。

ネタバレをすると感動モノ欲張りセットみたいな映画です。不幸な病に侵されながらも前向きな女の子!彼女と丁寧に愛を育んでいく男の子!幼い頃に母親を亡くしてからバラバラになっていた家族!息子や娘の言葉を受けてダメ親父から更生するパパ!彼氏の突然の死!こんなに詰めていいんか?ってくらい詰まってた。そのせいか途中で集中力切れるというか「え、何を見せられてるのこれは…」の時間が発生したな〜という印象。でも感動モノ大好き!な人には死と不幸と家族愛という感動ものにあるものが全部詰まってるからいいのかもしれない。
観る前に某ゲームの考察動画を観ちゃったせいでちょっと思考がそれに引っ張られてる感は否めないけど、透くんに無意識の傲慢さを感じてしまったのだった。というのも、戸惑いが多かった透くんの態度が明らかに柔らかくなったのは初回デートで真織ちゃんの事情発覚してからだったから。それまではなんか戸惑いつつもいい子だな〜一緒にいると楽だな〜くらいの感情だったのかなと思ってたけど、事情発覚以降明らかに態度が違う。え、何?そんなに前向性健忘が琴線に触れた?と思ったけど、冒頭の嘘告白でも透くんはいじめられてる友達を助けるために真織ちゃんに告白してるし、家事全般をするようになったきっかけも姉を助けるため。なんか、「自分を犠牲にして誰かを助ける」「見返りを求めない優しさで誰かを救う」という状況に異常に執着してる感。いつ自分死ぬかもって思ったかは分からないけど、泉ちゃんに頼んだことと言い後先を考えないで優しさを撒き散らし続ける姿にはちょっと怒りそうになった。作中本人が「もう逃げるのは嫌なんだ!」的な話をしたけど「家族の誰も自分を見てくれない、大好きなお母さんももういない、自分の人生は無色透明で意味がない」という現状から逃げて、前向性健忘が治ることはおそらくないから半永久的に困ってるし無責任に優しさを注ぎまくれる真織ちゃんに依存してるのでは…?と思っちゃった。手続き記憶のくだりも絵を描き続けて自分のこと忘れないでほしいってよりこんなのあるんだよ!助かった!?ねえ僕役に立った!?って感じがしてしゃーない。ひねくれてるんですね。
そんな透くんは遺された人間の辛さをまったく考えない(多分それが日野にとっても最善だよね!みたいな感じで言ってる。やべーよこいつ)すげー遺言を残していったのですが、それを完遂したお姉ちゃんと泉ちゃんがひたすらすごい。泉ちゃんはまだ言うて子供だから愚か…いやしゃーない…と思わせる言動もあったけど、お姉ちゃんはほんとすごい。弟の痕跡を消していく作業とかめちゃくちゃ辛いことやらされてるのに誰にも八つ当たりせず、涙を見せたのも家でお父さんと二人きりの時だけで、本当に…お姉ちゃんが作品のMVPだよ…!

悪口いっぱい言ったのでおすすめポイント。①陰キャの解像度が高い。透くんの友達?ぽい陰キャが出てくるんですけどヘアメイクさんよくやったな!!っていうような意味の分からない二次元でしか許されない前髪をしてて笑ってしまった。出るたびに面白い。なんなんだあいつは。でも陰キャって美容師さんにセットしやすい髪で…とか言わないし現実の人間の髪より二次元の人間の髪参考にするから面白い髪になりがちなんですよね(偏見)。②ヨルシカの歌がいい。健気ながらも仄暗い破滅願望が入り混じる、ただひたすらに真っ直ぐしか見つめられないような歌詞と完璧に皆笑えるハッピーエンド!というわけではない作品の雰囲気がとても合ってましたね!
感動してえ!ヨルシカ好き!って人に是非とも観てはいただきたい。
バクチャン

バクチャン