nile

NOPE/ノープのnileのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.5
異形の映像作品。
IMAXで観ることを想定して作られたクソデカホラー作品なんて今までにあっただろうか。映画館で観てよかったと心から思える作品。広大な自然やアレをこれでもかと大きく見せる空撮がとにかく凄まじい。これほど画面に酔いしれたのは『ダンケルク』以来。

異形のアレは結局何だったのかは最後まで明かされずにアレに対する理解は一定の距離を保ちつつフワフワとしたまま物語が進んでいく。主人公たちも正体にはあまり興味がなく、ヤバいものを見ちゃったからカメラに収めちゃおう!という半分悪ノリ。だからといってコメディ調なわけでもなく、流石ジョーダン・ピールともいうべきブラックネスも健在。誰もが知らずに無視していたとされる映画史における黒人の始まりを明確に提示してみせ、(おそらく)奴隷制や力による抵抗のメタファーとしてゴーディの惨劇。あとはアニメ好きなら一度は見たことあるあのバイクの止め方もあったりとオタクらしさも大爆発してて良かった。

極めて映画についての言及が強い作品だと感じた。フィルムカメラとデジタルカメラ、運動を表現する物体として馬から車やバイクへの変化していったこと、撮影監督や小道具(馬)といった存在など。とりわけ重要なのはGジャンを通して描かれた見る見られるの関係。役者はカメラの中でも私たち観客に見られることを常に意識する。また映画が初期に担っていた世紀の瞬間や現象の記録という役割が今ではyoutubeやtiktokのようなショートムービーを始めとしたライトなものへと変化していったこと。
だからこそGジャンの撮影はホルストによるフィルム撮影ではなくエムによるオモチャのようなカメラによって完成したのでは。
nile

nile