じゅ

NOPE/ノープのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

なんやら家の近くの山の上に半年くらいずーーっと全く動かない雲があって、なんとその雲の中にはUFOがいて、その姿をカメラに収めようとするもどういうわけかUFOが飛来した時はあらゆる電気機器が停止するからできなくて、なんとUFOそれ自体が巨大な生命体であることが判明して、UFOがナワバリの生き物を喰らいにきたタイミングを利用してついに手動フィルムカメラに収めたけどだいぶ無茶したおかげで窮地に陥って、なんやかんや頑張ってでっかい異物を食わせて詰まらせて爆発させてしかも食いつく瞬間もカメラに収めて決着、と。


むじいな俺には。むっじい。


ナハム書3章6節って言ってたっけか。「私はあなたに汚物をかけ、あなたを辱め、あなたを見せ物にする」みたいな内容。その辺の教養が皆無だから調べるの大変なんよ。

ググったかんじナハム書じゃなくてナホム書だった。がんばれ記憶力。
3章のその前の節を読んだかんじ、なんやら町に争いとか略奪が絶えなくて、5節で「万軍の主は言われる、見よ、わたしはあなたに臨む、わたしはあなたのすそを顔の上まであげ、あなたの裸を諸民に見せ、あなたの恥じる所を諸国に見せる。」とあって、でその6節に続くのか。

主がニネヴェを滅ぼすくだりっぽい。なんとなく聞き覚えのあるニネヴェってのは、古代メソポタミア北部アッシリアの都市だそう。
聖書の中でアッシリアは、他国と結んだ条約をすぐ破って襲って、軍事力を誇示して、過信して、偶像崇拝しまくって、どーしようもねえかんじだったみたい。それでアッシリアが他の国々にした蛮行がついに跳ね返ってきて、アッシリアの都市ニネヴェを同じような目に遭わせてるくだりだそう。

この6節とやらを単体で見るとやべえやつがやべえことしてる節にしか見えないけど、実は真にやべえやつに鉄槌をくだしてる節なのか。


じゃあ、だとして、誰が万軍の主とか主に追随する者で、誰がニネヴェの者に相当する?
直感的には前者があのチンパンジーとかUFOで、後者が人類っぽかったけど、そう思っておいていいのかな。

どうやらこのナホム書3章って野蛮な連中に野蛮な手で復讐するようなかんじに見えた。OJとかエムとかの人類サイドは、あのUFOが代表する何かに何らかの事情で復讐されてたのかなと思ってる。
UFOが代表する何かとは、たぶんUFOそれ自体とか、ゴーディだかゴールディだかっていうチンパンジーとか、あともしかしたら馬もかな。
何からの事情というのは、たぶん見せ物にされた屈辱とでも言えるだろうか。そう思うと万軍の主ってのが「あなたを見せ物にする」って言ってるこの節はなかなかドンピシャだった感がしてくる。チンパンジーはTV番組で見せ物にされまくってついにブチ切れたし、馬も映画だのCMに利用されるために調教されていた。それも露骨に人間本位のストレスフルな環境で。あのUFOも例外ではなかった。OJもエムもエンジェルも撮影監督もそこかしこのTV業者も我先に撮影に成功しようと躍起になって、スクープ映像を世に見せびらかそうと駆けずり回っていたし、牧場のテーマパークを経営するあのチンパンジー事件を生き残った元子役は観客を入れてショーにしていた。しかも馬をUFOの餌にして。
そんな人間どもへの鉄槌をあのUFOが下すという構図になっていたように思う。

馬と同じく生き物だから目を合わせるな、とか、見ると襲いかかってくる、ってのもその関係なのかな。文脈的に、自分が見せ物になることに何らかの形で加担した奴を殺す的な。

ただまあ、人類サイドの勝利か。エムにでっかい風船人形を食わされて詰まって爆発させられて、しかも形態変化した姿で風船人形に食らいつく瞬間を撮影されてる。
世知辛いっすね。
俺も実家の猫の写真を見せたいマンなんだよなあ。悔い改めれるかなあ。


ちなみにUFOの形態変化って何か意味してたんだろうか。あれモンスターハンターシリーズのアマツマガツチ感あってめっちゃカッコよかったな。(長いことやってないから古い記憶の中だけど。)
まあ「めっちゃカッコよかったな〜」で済ませてといていいかな。


あと序盤のCM撮影現場でのエムの黒人すげえだろアピールはどう思えばいい。
ジョーダン・ピールが脚本を書いたリメイク版『キャンディマン』(続編と言うべき?)が黒人から白人への復讐っていう雰囲気に満ちてたのがめっちゃ印象的だったから、そういうピール節っていう見方でいいのかな。

まあ正直、1番が偉いでしょみたいな価値観は短期的にはそうだなって思うけど、何十年とか長期的に引っ張るもんではないなとは思う。ましてや自分のコミュニティの誰かの成果であって自分の成果ではないし、ぶっちゃけださい。
てか、最初の映画とやらって1895年のルイス・リュミエールの『工場の出口』ってやつじゃなかったっけか。MUBIでそういう紹介をされてた覚えがほんのうっすら。まあそこは映画というものの定義をどうするかに依るから明確なことは言えないのかな。

まあ何より、そんなアピールをしなきゃいけないんだなってのが世知辛い。みんな横並びになれたらいいね。
じゅ

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