Kun

NOPE/ノープのKunのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.5
彼の作品の中では今んとこベスト。史上初めての映画から、トリュフォー仕込みの昼夜反転ショット、そして手動ハンドルぐるぐるのIMAXフィルムカメラによる体当たり撮影、と映画史(特に撮影)辿る様なストーリーが骨格にある。まさに映画についての映画である。この映画を観ると、IMAXカメラで撮影する苦労とそれに見合う成果が得られるかどうかの難しさが、よーーーく分かってしまう。iPhoneでも映画が撮られる昨今、動画の撮影と編集がこれまでになく大衆に行き渡った今、映画を撮ることの意味とは?と考えたときに出てくるのはやはり、ここでしか撮れないショット、あの人にしか撮れないショット、あのタイミングであそこにカメラを置いたから撮れてしまったショット、それに限るのだと思う。動物の捕食シーンばかり観るホルストは言うまでもなく変態であり、彼とプライベートで仲良くする様な人間はいないかもしれないが、最後その彼にしか撮れないショットを撮ることに関しては命を燃やしたシーンは思わずグッときた。映画は必ず終わる、けれど今日ではない。誰にも動画を撮れる時代だからこそ、映画を撮影する底力、自分がこの時代に生きる意味、これまで培った技術と、最高の機材の全てを凝縮したそのショット。僕は忘れません。
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