なお

NOPE/ノープのなおのネタバレレビュー・内容・結末

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

"絶対に見てはいけない大牧場24時"

ふだん自分はTOHOシネマズを映画館ハシゴの根城としている。
そのTOHOにて半年前…はさすがに言い過ぎかもだが、とにかくしつこいくらい長期間に渡って本作のティザー映像を本編公開前に見てきた印象がある。

公開は先週だが、なんやかんやあって1週間遅れの鑑賞。
その間タイムラインに流れ続ける本作への称賛レビュー。
やはり話題作は押さえておかなくっちゃね…

✏️ホラーとエンタメの融合
『ゲット・アウト』に『アス』。
単なるホラーやスリラー映画といった枠を飛び出て、現代社会にはびこる人種差別問題やその他社会問題へのメタファーがふんだんに盛り込まれた作品を手がけてきたジョーダン・ピール監督。
そんな過去作たちと比べても、本作は個人的に一番好き。

前半部分は、不慮の事故により死亡した父から牧場を受け継いだOJ(ダニエル・カルーヤ)とその妹・エメラルド(キキ・パーマー)の”未知との遭遇”を描く。
自分もティザー映像の時点では「未確認飛行物体(UFO)」を主題とした物語なんだな~、てか予告映像の時点で見せすぎじゃない?、てか今この時代にUFO???くらいにしか思っていなかった。

が、フタを開けてみれば件の円盤は「UFO」といったSF映画における陳腐な存在ではなくれっきとした「生物」。
ウマやブタ、ひいては人間と、自身と目が合った生けるものを喰らいそして排泄する。

宙に浮かぶその見た目は、地上にいるエサ---自分以外の生物の動きを監視する「目」のようでもあり、その生物を捕食する「口」のようでもあり、かつ補食したものを排泄する「肛門」のようでもある。

あの物体はUFOではない---
そんな事実を認識した後も、得体の知れないその存在への恐怖は持続する。
「どうせUFOなんでしょ~」と、そんな根拠のない淡い期待を抱いた観客の虚を突く真相にはなかなか驚かされた。

✏️ヒトに近い存在
本作においてもう一つ、「虚を突く」展開。
それはチンパンジーのゴーディの存在だ。

てっきり未確認飛行物体の一本槍でいくものだと思っていたから、これは完全に予想外。
劇中に登場するチンパンジーのゴーディは、1996年から放送された架空のホームドラマのアイコン的存在。

「服を着せられ、ドラマに出演させられる」という人間の完全なエゴによって野生動物としての尊厳を破壊されたゴーディは、ドラマの出演者たちに牙を剥く。

チンパンジーはヒトから見て最も系統的に近い動物であり、知能が高く、そして攻撃的かつ獰猛な性格を持つことでも知られている。

本作で起きたゴーディによるドラマ出演者への加害はフィクションであるが、現実でもチンパンジーがヒトを襲った事例は多々ある。

本作でも、既に息も絶え絶えの人間に容赦なく殴打を加えるゴーディの姿は「野生動物の本能」そして「怖さ」を思い知らされる。

OJたちが謎の生物と戦うシーンよりも、個人的にはゴーディが巻き起こした事件の内容とその顛末の方に恐怖を覚えた。
なんなら、これを題材に別で映画を1本作ってほしいくらい。

✏️オマージュ
そんなガチガチのスリラーテイストから一変して、件の飛行物体が「生物」だと分かった瞬間からOJたちの目的はその生物を打倒する方向へ。

ついさっきまで未知との遭遇をやっていたのに、急に『ウルトラQ』のような未知の生物の生態を分析して、人間の知恵を持ってやっつける展開に急シフト。

ここらへんからはホラー/スリラーというより、SF/特撮的な色が濃くなる。
というのも、ジョーダン・ピール監督は『新世紀エヴァンゲリオン』や『AKIRA』などといった日本発の作品に多分な影響を受けたそう。

言われてみれば、件の飛行物体の最終形態は「使徒」を彷彿とさせるし、エメラルドがバイクに乗った後のとあるシーンはAKIRAの有名なワンカットに酷似している。
この急展開についていけるか、またそれを咀嚼して受け入れられるかは完全に個人の裁量によるところが大きい。

個人的には、本作で敵が抱える「弱点」が論理的に導き出されており、かつそのルールに則った形で物語が進んでいくためこれといった違和感はナシ。

☑️まとめ
最初から最後まで、とにかく油断ならない展開が目白押しの約2時間。
ぶっちゃけ、予告の時点ではそれほど期待していなかったので良い意味で期待を裏切ってくれた。

欲を言うならば、ぜひIMAXで観てみたかった…

🎬2022年鑑賞数:102(42)
※カッコ内は劇場鑑賞数
なお

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