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NOPE/ノープのSSSのネタバレレビュー・内容・結末

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

 『ゲット・アウト』『Us』のジョーダン・ピール監督の3作目。南カリフォルニアの片田舎にUFOが現れたことによる“最悪の奇跡”を描く。社会派×サスペンススリラーの組み合わせで名高いジョーダン・ピールだが本作でも面白さは健在。主演は『ハスラーズ』のキキ・パーマーと『ゲットアウト』でも主演を務めたダニエル・カルーヤ。


良かった点
・ラスト30分をのぞく全編に蔓延る不穏さ
冒頭から画面から不穏さが伝わってくる。冒頭のOJと彼の父の会話シーンですら、開けた視界の青空の下であるのに既に不穏であり、実際落下してきた5セントで彼の父は亡くなってしまう。明るい場面においても安全ではないということを観客に示す秀逸な演出だ。

・空のジョーズことUFO
UFOという怪奇現象は遥か昔から恐怖の存在と扱われつつももはやギャグのように陳腐化してしまっているが、本作ではきちんとUFOを怖い存在として描いている。また、空にジョーズがいるかのように雲から逃げ回る様子は当事者からすれば必死の逃亡だが側からみれば遊んでいるようにすら見えるという点で海水浴場でジョーズに襲われるシチュエーションを思い起こす。

・AKIRAリスペクト
いわずもがな。
金田のバイクは最高にクールだし、膨張した鉄雄に潰されるのは避けたい。

賛否両論点
・ちょっと長めな上映時間
ストーリーテリングやショットの力で見ている最中は時間を感じさせないものの、見終えてから振り返ってみるともう少し短くてもよかったのでは?とも思える内容。初期版では4時間もあったそうだがそれに比べれば2時間15分はまとまっている方かもしれない。

・UFOと関連していると観客にミスリードさせるゴーディと靴のくだり
現在パートの合間に過去パート(ゴーディ)の情報が提示されるためUFOとの関連性を疑うが一切関係がないことが判明して少々肩透かしであった。ジュープ(スティーブン・ユアン)の自己確立に関係しているという点では無関係というわけではないが……。


総評
社会派サスペンススリラーの名手として既に名高いジョーダンピールだが、本作では説教くささ(失礼!)は抑えめでエンターテイメント性を高めており、万人受けしやすい作りであると感じた。視線や見られることが映画産業におけるマイノリティへの視線の暗喩といったレビューをみかけたが、個人的には“距離感”もテーマにあったと思う。Gジャンを見ると殺されるというルールが提示させるが遠方から眺める分には問題ないためだ(実際 、OJは何度もGジャンを目撃しているが生存している)。ここで感じるのは見られていることを対象が知覚する距離で見てしまうとしっぺ返しに襲われる、つまりは物事に対して正しい距離感を取らないとしっぺ返しをくらうということではないか。マイノリティ云々だけでなくSNSなどで対象への距離感が壊れつつある現代社会への警鐘な気がしてならない。
作品の性質上、視界が広い方が怖い作品なので是非ともフルサイズIMAXで鑑賞したい作品である(諸事情で観られなかったけど…)。
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