近本光司

NOPE/ノープの近本光司のレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.0
「わたしのひいひいひいじいちゃんも馬の調教師で、マイブリッジの撮った連続写真の被写体、あの馬に乗っていた黒人ジョッキーでもあったのよ。つまりは映画は生まれたときから黒人が支えていたってわけ。知らなかったら調べてみて」というエムの誇らしげな語りを聞いて、わたしは映画館を出てすぐさまスマホで検索してみると、これはフィクションであるとわかった。してやられた。
 もはや手垢のつきすぎたUFOモノを撮るにあたって、飛翔体自体を捕食する生物という設定にして、それを馬の調教師兄妹がドキュメントしようとする筋書きはおもしろいし、劇中で流れる音楽の選曲や、間の抜けた顔がチャーミングなカラフルなバルーンを地面に散りばめた映像もいい。品のよさを感じる。
 しかしこの品のよさもまた、どこかで窮屈さを感じるんだなあ。この映画をヴィルヌーヴが撮っていても、なんならノーランが撮っていても驚かないというか、ハリウッドという場所の懐の広さと狭さを同時に体現した作品に思えます。