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NOPE/ノープのKtoのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.0
【ひと言説明】
ジョーダンピールによるユニーク過ぎる「やはり、ただじゃすまない」UFO映画

【感想と考察】
get out, usからの3作目。原案はコロナによるロックダウン中に書き始めたとのこと。
"閉塞感"や"外出の恐怖"が暗示されるのは、その影響があるのかもしれない。

ジョーダンピール監督らしい知的に予想の斜め上をいく最高の展開。最後のスペクタクルが異常に豪華、もはやあの造形はシュールレアリズム。小気味良いセリフの応酬、伏線回収(手巻きの写真、旗、木馬、鏡)も気持ち良い。蛇足が一つもない。舞台があの時代遅れな遊園地である必要性がある。

Q.黒人俳優の扱いについて。
→前2作と共通して繰り返し訴えているのは、黒人の存在感。世界最初の映画に出演したものよ過小評価されている黒人俳優、それに対するアンサーとしてのこの映画(黒人俳優主演でヒット達成)。

Q.なぜ、アジア人、チンパンジーなのか?
希少な見世物として揶揄する特権的な"白人"を、怒り狂って片っ端から殺してゆくチンパンジーが、その場で唯一のマイノリティであるアジア人に共感し拳を合わせむとする。しかし、彼は大きくなってから「馬」や「UFO」までも見世物に昇華し名声を集めようとする。最終的には(ジョーダンピール的な)天罰が下る。

Q.なぜ、馬、UFOなのか?
見世物として"白人社会"に使われる馬。馬の安全講習に見向きもしない"白人"を蹴り飛ばす皮肉。動物を飼い慣らすことに長けた兄が、UFOの習性をいち早く掴み、"飼い慣らす"。一方で、習性を解さず、単にスペクタクルとして消費する"無理解な白人"(ショーの観客、バイクの取材者)が食い尽くされるところは、黒人を含めたマイノリティを安全圏から眺めて消費する社会全体への制裁を体現しているのかもしれない。

命懸けで戦った兄弟の成果が、"安全圏の白人社会"に消費されるかもしれないラストは、ジョーダンピールの痛烈な社会批判なのかもしれない…。

やはり、ただじゃすまないな…。
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