Morohashi

NOPE/ノープのMorohashiのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
5.0
映画の大まかなストーリーはあるものの、テーマがとても曖昧。
簡単に言うと、人食いUFOの撮影を試みる話。あわよくば退治できたらいいな、みたいな。
よくわからないけれど、なんとなく盛り上がる音楽とイケてる展開。
未知との遭遇と、JAWSと、ジュラシックパークと宇宙戦争をかけ合わせたような、スピルバーグの映画を辿っているような映画。
NOPEは順番を変えるとOPEN。

この映画の冒頭で「そもそも映画は黒人が馬に乗る2秒間の映像から始まった。」というセリフがあるが、
私達の認識する映画とは、エジソンやリュミエール兄弟が発明したことになっている。つまり、映画史の中から完全に黒人が除外されている。
もともとはOPENだったはずの映画は、終盤にいた"N"がさも最初にいるかのように見せたことにより、黒人に"NOPE"を突きつけた。

つまりこの映画の大きなテーマは、黒人が映画史の中の立場を取り戻す話。


そうなってくると、じゃあUFOは何?って話になるわけだけど、おそらくUFOは映画会社や映画ビジネスを象徴している。
アジア系のカウボーイの出自が、人間の手では制御できなくなってしまった暴徒サルを手懐けたところにあるが、あの経験のおかげで彼は映画ビジネスの中で生き残ることができた。
つまり、彼は映画ビジネスという巨大なモンスターを手懐けた男、っていうことになる。
ところが、映画のことを掌中におさめ、映画を知り尽くしたとおもいきや、さらに別の映画ビジネスに食われるという皮肉。


ところでUFOが旗を食べるとなぜ消化不良を起こすのかはだいぶ謎。
でもあのUFOの前では電気がなくなるっていうのは、つまり巨大なビジネスに立ち向かうためには技術ではなくて、真の人間としての強さが問題っていうことだろう。
最後は映像ではなく、写真に納めるところも象徴的。
映画のトレンドなんてものは移ろっているように見えて、実はその場限りの消費の連続でしかないってこと。
映画自体もコマ撮りを映像のように見せているだけであって、コマは個別の事象。
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