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NOPE/ノープのkmtnのネタバレレビュー・内容・結末

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「アス」は娯楽性よりもテーマ性が先行しすぎた結果、賛否両論となったが、本作についてはどちらも非常に高く維持されており個人的にはジョーダン・ピール三作品の中では最高傑作だと思った。


正直、画面に映る数々のシンボルについては分かっているとは全然思わないけれど、不穏さだけで充分ワクワクしてしまう。
ブラフ的に「意味もなく画面に置いてみただけ」ということはないだろうから、また考察は他の方の感想を観ながら考えていきたい(中盤の直立した靴などは本気でよく分からなかった)。


本作は「ジョーズ」の影響がよく言われるし、実際そうなんだろうけど、異形との対決、荒野……とくると私は「トレマーズ」だなと思った。
めちゃくちゃ本気で観客をビビらせにきているトレマーズ。
主人公がカウボーイルックなのも似ている。


カウボーイと言えば、この映画はめちゃくちゃカッコいいヒーロー映画でもある。
主人公O・Jは決してヒロイックな存在ではなかったのだけれど、終盤腹を括ってからは本当に馬上での一挙手一投足決まっている。


作中何度か語られる、エドワード・マイブリッジの世界初の動画「動く馬」のお話。
馬に乗っていた、黒人ジョッキーの名前は世間に全く知られていないが、実はその末裔が我々なんです!と意気揚々と話をするエメラルド。


誰にも名前を知られることがなかった、馬に乗る黒人男性。
その末裔(勿論、末裔という設定は、この映画の虚構であるけれも)が同じく馬上で、世界中の映画ファン達の前で今現在、魅了してやまない。O・Jその名前は映画ファンの中に忘れられない名前として刻み込まれた。
この事実が、ブラックカルチャーがこの百数十年で躍動した証拠であることを、まざまざと見せつけられた気分になった。
2時間少しの上映時間の中だけでも、歴史の中で大きなパラダイムシフトが起きているのを感じられてとてつもなく興奮した。


ちなみに今更某ラッパーの批評を聴いていて、「見る、見られるについての映画でもある」と仰っていてなるほどなあと。
言われてみれば、一番分かりやすいテーマ
なはずですが観てる時はあまり分からずでした。


グロ描写は許容範囲でしたが、少し前に子どもが産まれた身としては、何も悪いことをしていない子ども達も平気で巻き添えになるのは、結構キツかった……。


全体としては、一番最初に書いた通り、娯楽作品としても、アートっぽさもどちらもジョーダン・ピールの中では最高傑作だと思いました。


最後に一つ、これは本当に私が悪いんですがiPhone SEで観てると、暗くて、結構画面が観えなかった。
「サンセット大通り」にて、グロリア・スワンソンの名言として「今も大物よ。映画の方が小さくなったの!」というものがあるけれど、確かに映画は小さくなったのかもしれない。手のひらサイズへと。
改めて映画館で観なければならない映画ってあるんだなあと思った次第です。
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