とりん

NOPE/ノープのとりんのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
3.8
2022年86本目(映画館41本目)

「ゲット・アス」でアカデミー賞ノミネートするなど注目を集め、続く「アス」でも独特な表現とそのメッセージ性の強さから高い評価を得ているジョーダン・ピール監督の長編3作目。
個人的には前2作はあまりハマらなくて、「ゲット・アス」は狂気じみたところに触れられるメッセージがささったりはしたものの、「アス」はさらに尖った感じでイマイチ響かず。でも今作は個人的には結構良かった。まぁSFにかなり寄せてきたというのもあるかもしれないが。
気味の悪さは前2作と比べるとやや薄くなっているものの、独特な感じと予想の斜め上をいったなかなかの展開だった。いやこれまでのSF作でも近いのはあったかもしれない、でもなぜか違うと感じてしまう。
とにかく音使いが素晴らしかった。他の方の感想でも見かけていたので期待していたが、こういうことかという感じかと驚いた。これはIMAXやDolby Cinemaといった音響が良いスクリーンでやる意味もわかるし、そっちで体感したかった感もある。もちろん劇場での鑑賞を勧めるけど、配信で観るなら音にしっかり集中できる環境で観るのがベター。繊細な音使いというわけではないけれど、SFならではというか観たらわかるというか、あの感じは言葉で表現しづらい。個人的には音響効果がこの作品の中で一番ポイント高いかな。
経営難な馬牧場で、ある日父が空からの飛来物に当たり亡くなる事件が起こる。飛行機からの落下物と思われたがその時実際に空にいたのは飛行機ではない何か。その何かを撮影するために機材などを揃え立ち向かうけれども、何かが現れたときはあらゆる電化製品は使えなくなり、その何かを映し出すことができない。どうにかして写そうとするも何かの魔の手が襲いかかる。
なんか後半B級SFホラー感出てるけど、そうも思わせつつそうでもないところがまた。CGを駆使した映像技術はこれまでもあったけれど、今回は彼の作品の中では一番って感じだったし、独特に魅せるカメラワークも見事。
主演のOJ役には「ゲット・アス」で監督と主演でタッグを組んだダニエル・カルーヤ。彼のあの演技と目力は引き込まれる。父の死の時も動転するほどでもなく常にクールというか周りに対して無気力、全体的に沸点が上がりきる感じを見せないけれど、中はすごく熱く、妹を守ろうとする姿も良い。彼のこのキャラがあるからこそ、全体的な不気味さの統一感取れてる気がする。
なんとかアレを映像に残そうとして撮影魂炸裂する姿とかってなんか映画愛感じたりもする。そしてなんだかんだで踏んだり蹴ったりしながら生き残るあいつも面白い。
狂気的な部分はあまり感じられないけれど、ぶっ飛んだというか独特なシーンや気味の悪さなどは少なからずやはりあって、ジョーダン・ピルだからこそメッセージ性もきっと中に含まれている。またしてもそこを深く読み取ることはできなかったけれど、これはこれでいろいろと考察しがいがありそう。いろんな人の解説とかも聴きたいな。
ネタバレ厳禁なんかも目にしたけど、正直どこからがネタバレなのかもわからないくらいなんかいろいろあった気がする。予告の作り方も上手かったかな。肝心なアレを直接的には描写してないし、よくわからない何かという点で留まっている。そこから連想できなくもないけれど、様々な点でやはりこうきたかと思ったりもする。
本作の考察なんかも考えつつ、過去作をまた振り返ったりもしたいな。
とりん

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