森野c5果実

NOPE/ノープの森野c5果実のレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.0
非常に社会風刺的な内容でありながら、表向きはSF/ホラーとしてリリースされている。雲に擬態した作品。

冒頭のナホム書の引用、直立した靴にはじまり、暗示的に盛り込まれたカットの数々に「これなんのメタファーなんだろう?」って絶えず考えさせられる。”それ”の正体がじわじわと明らかになっていく過程もよく出来ていて、知的な刺激が面白いーーー!

■社会批判
動物たちと人間が上手く付き合っていくには私たち人間が動物の習性を理解する必要があるけれど、理解したからといって完全に掌握するのは不可能。
動物は習性的に 視線を感じる=命を狙われていると感じますから、戦うor逃げるの行動をとります。自然を操ろうとする人間の傲慢さや愚かさが描かれていましたね。
また、黒人・アジア人・動物がいかに軽視され、搾取的な立ち位置に置かれてきたか…SF/ホラーという枠組みを使って鋭くえぐります。

■直立した靴と天罰
直立する靴が映し出された時、てっきり超常現象なんだと思いましたが、案外そうでもなく単なる奇跡なのかもしれません。

作中、人間たちはチンパンジーや”それ”を使って収益化しようとしますが、いずれも罰が下ります。
でも、チンパンジーが暴走した際にジュープ少年は襲われなかった。何故でしょうか?
子どもだから?チンパンジーに好かれていたから?
色々考えてからもう一度見返しましたら、たぶんこれ、直立した靴に注目していたお陰でチンパンジーに視線を向けていなかったからなのだと気付きました。敵意がないと判断されたのね…
固定されたカメラワークのど真ん中に靴。辺りをうろつくチンパンジー。そういう意図の構図ですよね。
それなのにもっと有名人になりたい!自分は特別なスターなのだ!と勘違いしてしまったジュープはなんと哀れなんでしょう。

■かなり音が重要
これはドでかスクリーン&IMAXの映画館で観たかったなぁ。それで、帰り道に空を見上げて余韻に浸るの。


パニックものかと思いきや、社会的メッセージを沢山盛り込んだ独特の表現力に好感を持ちました。
ジョーダン・ピール監督は元々コメディアンだそうで、この知的なセンスがお笑いでどのように発揮されていたのか興味があります。
森野c5果実

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