せいか

NOPE/ノープのせいかのネタバレレビュー・内容・結末

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

9/27、AmazonPrimeにて視聴。字幕版。
そもそも宇宙人的なものに興味が薄いのと、本作から何となく漂ってくるものによって直感的に全く期待していなかったが、案の定、つまらない作品だった。こういうのやるつもりなんだなーって要素はやたらと散りばめられているけれど、雑というか、とにかく私には退屈なものでしかなかった。あと登場人物みんなアホというか、気分悪くなってくる人しかおらんので、単純にそこが苦痛でした。
馬が最初から最後までたくさん出たのはうれしかったですまる

本作では、たぶん?主に?アメリカというものが掬い上げられてるのだと思われる。
カリフォルニアの荒野、西部劇、映画の勃興、黒人の立ち位置、メディアというもの(とそのおこがましさ)、うわべだけの幸福で取り繕ったホームドラマ、バズりを意識したカメラ、猿、UFO、宇宙から現れる異物というアメリカ的なある種の神話、アメリカの僻地の生活、作りものの世界(テーマパーク)、恐怖感、不安感。
舞台がハリウッドにも協力している馬を育てている場所で、アニメーション、写真、映画の分野を齧れば必ずというほど出てくる「Animal Locomotion」という人を乗せて走る馬を連写したものから存在を無視される黒人というものに着目していろいろ上記の要素も合体させて本作はできているのだけれど、とにかく、やりたいことがはっきりしてんだかしてないんだかで話を作って映像を作ってとしてるので、シナリオも映像も共に中途半端な感が否めないままそういうのがずーーーっと続く。
鏡で映し出されたものを見ることで混乱だか発狂だかする動物たちということから導く暗喩的なものもうまく人間やその社会に照射しきれていない(たぶん、本作はそのつもりで作ってるのだろうからこういう指摘をするが)。目で見るにしろ、何らかの媒体を通してにしろ、「見る」ということも題材になっているのだけれど、こちらも同じだ。偽りのものを剥ぎ取るというのも、本作はあらゆるシーンで描いてこそいるが、がっつりちゃんと昇華しきれないまま作られているので、観ているこっちが消化不良で爆発しそうになる。
やりたいことに焦点を当ててないから、結局、それらの題材を通して何を言いたいのかが全く掴みかねるのだ。本作のままだととっちらかっていて、アメリカ社会についてなのか、映画界についてなのか、映像・写真を撮る行為ひいてはSNSなどの投稿サイトなどを介しての社会についてなのか、人間社会のうわべ的なものについてなのかとか、とにかくもうなんかいろいろ可能性はあるけど絞れないし、繰り返すがとにかく中途半端なのでそういった連想はできてもどれにしたって全く琴線に届くものにはなれていない。異物や圧倒的に抑圧的なものに対する拒否感というものもあったと思うけど、なんかそれもお茶濁してるというか。
たぶん、Noを強調したりとかするような意味であったり、「無理」と表現する語彙である他に、本作では、「no + hope」といったものも加味されてるのだろうとは視聴前から予想していたし多分そうだったのだろうけれど、なんかそのへんも微妙だし。
もっとどうにかできへんかったか?の気持ちで最後まで観る羽目になった。

テーマから外れても、話の進行にしてもご都合的というか、なんでラストで用いる馬は大人しく言うこと聞いてくれるん?とか思うし、肝心のUFOが出てからが一気につまらなくなるし。
あと、話も単純な割に妙に小骨が引っかかる拙さがあって、映像面でも観ていて何をやりたいのか分からない画作りになっているところも目立つ(動かない雲に画面越しに気づくシーンとかいろいろ)。

あと個人的にサルの類が本当に嫌いでもちろんだからニンゲンも嫌いなんですけど、それはさておき、本作ではホームドラマで人間に都合よく扱われるサルとしてチンパンジーが起用されており、このチンパンジーが鏡のような風船を観てしまうことで凶暴化し、出演者たちに襲いかかって惨たらしく殺して回った末に銃殺され沈静化を図られるというシーンが出てくる。馬に対してもそうだったように、ここから見られるのは動物を支配できるもの、都合よく扱えるもの、危害は加えてこないものとする人間の愚かさや傲慢さ、テレビ番組の形で作られそれを拡大しようとする行為みたいなのだと思うし(あと多分上述したようなフワフワ要素のどれかにも合致するんだろうが)、概ねそのへんは「そうよね……」って感じだったんですが、いかんせんサルがマジで嫌いなので地獄のシーンだった。サルを見る羽目になったときに感じる不安感をそのまま映像化された感じである。意思疎通のできなさというか、それはどの動物にもそうだし人間もそういうとこあるんだけども。
動物の目を見る行為って人間だとコミュニケーションになると思うけど、作中冒頭でも主人公が言っていたように、相手の注意をいたずらに引いて最悪ただ挑発するだけのものなのだよな。気を付けような。

というわけで、も少しこの風呂敷上手に畳めなかったのかなと思う作品でした。
せいか

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