まーしー

NOPE/ノープのまーしーのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
3.0
空からの落下物が命中して父を亡くした牧場経営の兄妹が、謎の飛行物体に立ち向かうSFホラー。

ジョーダン・ピール監督らしい、メッセージ性に富んだ1本。
どう受け止め、どう理解したら良いのか、鑑賞後に頭の中に「?」が飛び回った。

主人公の兄妹は黒人。先祖は白人たちに支配されていた人種。
そして、二人は牧場の経営に行き詰まりを感じており、買収の話を持ちかけられるほど。
この点、彼らがヒエラルキーの下層に位置していることを暗示している。この位置から脱却するには、一攫千金・一発逆転を狙うしかない。
ネタバレになるので詳細は控えるが、そのような兄妹が起こす「最悪の奇跡」を描いた作品だろう。

牧場経営の兄妹のほかに、テレビショーに出演するサルも登場。
ある時、そのサルが悲劇を引き起こす。
この描写が不可解。主人公の兄妹とは全く関係がなく、この挿話だけが作品の中で浮いている。
しかし、後になって気づかされる。人間の見世物という被支配者だったサルの反撃だったということを。そして、それは同じくヒエラルキーの下層にいる兄妹の反撃と重なるものだということを。

謎の飛行物体というSF要素に目が行きがちだが、上述のようなメッセージを監督は伝えたかったように思った。
ただ、観客に解釈を委ねる内容のため、最後はモヤッとした感想が残る。だからこそ、人によって解釈や感想が異なりそう。
同監督の『ゲット・アウト』や『アス』と比べると衝撃は少ないが、新鋭監督として注目される作品であることは確か。