MK

破戒のMKのレビュー・感想・評価

破戒(2022年製作の映画)
4.4
デリケートなテーマだけに感想が書きづらいというか、自分なりの差別との距離感を確かめるような時間だった。

存在はもちろん知っているものの、原作も読んでないのだけれど…部落差別を扱った作品。

武士というなんら生産性を持たない人々が特権階級を維持するために作り上げた社会システム…社会の忌みごとを担う人々を下等な人々と見るだなんて…ロシア戦争期と重ねた物語はただただ黄色と揶揄されたオール日本人のそのなかのさらなるくだらない差別だと思うとやはり同意し難い制度にしか思えない。

黒人奴隷売買を正当化するために黒人を下等な人種とカテゴライズした苦し紛れなイデオロギーに近いどうしようもなくお粗末な社会システム。

そんな崇高な問題はさておき、嫉妬、妬みなどなど。自分のなかに芽生えた薄汚い感情を正当化するために相手を異質なものとして攻撃、排除するということが差別なんではないかなとしみじみ思った。

他人との比較の中で垣間見える劣等感。
そんな劣等感を解消するために引き合いに出される劣等感を生み出す尺度とは別の優劣。家柄、金銭、身分、身体能力…そして出自。

アイツよりはまだマシ。
アイツは部落民だから。

部落民に石を投げつける平民たちをみて、安堵している人々がどれだけいたかと思うと薄寒くなる。

構造主義からのポストモダンがリベラリズムに対抗するという著書を最近読んだだけに、国内の差別意識が、もっと知的な議論になっていけばいいなとおもった。

あとはグッときたシーンのセリフメモだけ


差別というものは
人の心から簡単に消えはしない気がする

よしんば

部落差別がなくなったとしても
その時は新しい差別が
生まれているかもしれない

人間というものは
それほど愚かな生き物なのでしょうか?

愚かではないが
弱いんだ

弱いから差別する

しかし

理不尽な差別は
どんなことがあっても
許してはいけません

君の言うとおりだよ

我々は侮辱され
罵倒され
貶められながら

それにじっと耐えてきた
劣悪な生活環境で
十分な教育も受けられず

社会の底辺で
言われのない
差別や偏見に甘んじてきた

僕は我慢できないんだ
だから
呪われた烙印を投げ返すために戦っているんだ

我々が
人としての尊厳を取り戻し
悪夢から解放されるために

我は穢多なり
されど我は穢多を恥じず
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