umisodachi

MEN 同じ顔の男たちのumisodachiのレビュー・感想・評価

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
4.0
アレックス・ガーランド監督、ジェシー・バックリー主演。

夫の死で心の傷を負ったハーパーは、癒しのために田舎のカントリーハウスに滞在しようとやってくる。しかし、森の中で何者かに尾行されたり、敷地内に浮浪者らしき人物が侵入したり、初日から散々な目にある。しかも、近くの村で出会う人々は全員同じ顔をした男で……。

きんもっ!!気持ち悪っっ!!めちゃくちゃ気持ち悪い映画だったー!!

村にいる男(というか男しかいないんだけど)が皆ロリー・キニアの顔をしていることは普通に面白いんだが、このミニドラみたいなロリー・キニアが全員超キモい。すごく単純な言い方をしてしまえば「男性のイヤなところの具現化」なのだろうけれど、映画が扱っているのはもうちょっと先の議論かなという印象。

基本的に、『マザー!』並にキリスト教や神話メタファーがてんこ盛りで、非常にわかりやすい作品である。カントリーハウスに到着した直後に木からリンゴを取ってハーパーが食べるなど、誰でも気づくようなメタファーがたくさんあるし、しかもそのほとんどをちゃんとセリフでも説明する。だから、張り巡らされたメタファーや伏線に気づけるかを楽しむタイプの作品とはいえない(全部ハッキリ説明されちゃうから)。

【以下、ネタバレあり】



























ではなんなのかというと、考え方なのかなと感じた。離婚を希望するハーパーを夫は糾弾し、離婚を主張して自分を傷つけるならば、自殺してお前に一生罪の意識を負わせてやると脅迫する。さらに、そんな夫に怯えるハーパーに激怒し(怖がっていること自体に怒るって理不尽)、殴ってしまう。

暴力と恐怖で支配して、相手が思い通りにならないことに怒って対話に応じないのみならず、自分こそが被害者で相手がすべて悪いと信じてしまう思考回路が恐ろしいわけだが、田舎で出会う男たちはすべてこの思考回路に則った行動を取る。

少年は、かくれんぼをしてくれないハーパーをビッチと罵る。

神父は、夫が死んだのはハーパーのせいだとなじる。

警官は、実際に物理的な被害があったわけではないのにハーパーが自意識過剰だったと判断して不法侵入者を解放する。
(さらに、リンゴ泥棒ネタを持ち出してハーパー(女性)=罪人というイメージを再度強調)

などなどなど。自分の思い通りにならない相手が気に入らない、こちらが望んだとおりに行動すればいいんだ、文句を言うなと…まあそういうことを色々な言い方で表現している。

しかも、神父はハーパーに対して、女性に性的魅力があるのが悪いと言い放つ。男性が女性を支配しているのではなく、女性が性的魅力によって男性を支配してるんだってさ。男性は抗えないから被害者なんだって!(エクストリーム理論すぎてちょっと笑っちゃった)

本当に心から「キモいわ。単性生殖でもしてろ」って思ってしまうわけだが、その通りの展開になっていくから気持ち悪すぎてそのまま笑いが止まらなくなってしまった。手を変え品を変え微妙に変化させるのやめて!笑

とまあ、男キモ!という映画であることは間違いないし、男なんてみんな同じだろという(ハーパーの)うんざりした気持ちが「同じ顔」に込められているのも確かなのだろうが、同時に喪失を描いた作品でもある。そして、なにも女は何も悪くないと断言している作品というわけではないのはラストシーンからも明確だろう。エクストリーム理論に陥る危険性はどの立場でもあり得るし、結局のところ男女で完全に分かれて生きていくこともできないわけで。求めあって共存して生きていくのはどちらにとっても同じ事。同じ顔をした男を産み落とすのは女なんだからね。

あー、それにしても気持ち悪かったああああああ!!














umisodachi

umisodachi