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MEN 同じ顔の男たちのSSDDのレビュー・感想・評価

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
3.2
■概要
ある理由から傷ついた女性は田舎町の屋敷のような場所で休養しようと思い立つ。
自然に癒される中、次第に不穏で不快な出来事が始まる…。

■感想(ネタバレなし)
正直なところエンターテイメント性は皆無に等しいというくらいやり過ぎでした。
前半の素晴らしい景色と音響に自然に飲まれるような同調される色彩と音の癒しから、不愉快で気持ちの悪いものに変化するのは本来ホラーとして出来がいい。

しかし過度な演出と繰り返される隠されたミーム(意味を込めた象徴)があまりにメッセージ性も回りくどく、気持ちが悪い。スプラッタが平気な自分でも頭痛がしました。

主人公が思う不快さは理解できるものの攻撃的な思考の持ち主過ぎて、観ていて疲れるので感情移入もできないのも加速させていました。

監督のインタビューを見る限りかなり偏りがちな思考ぽさを感じるので、A24との組み合わせが同調率強すぎて拍車がかかったのでしょう。

ライトハウス、セイント・モード/狂信あたりも不快指数は高いものの映画としての出来は楽しめるものでしたが、ちょっと今回は異常にメッセージ性が強い割にわからせたがらないは、あらゆる宗教、神話的要素がごった煮でお腹いっぱいになりました。

監督インタビューを観るまで解釈の仕方もよくわからなかったです。値下がりでポイント視聴を楽しみにしてた分、期待しすぎたのかもしれません。
万人というか大半におすすめできる作品ではないです。













■感想(ネタバレあり)
・主人公の気質
男性に暴力を振るわれたという事実は女性にとって男性が思うよりも重いと私は思っています。どう考えても勝てないものに一方的に攻撃される可能性というのは、熊に襲われると考えればそれが戯れてただけと言われようと二度と近づきたくなくなるようなものです。植え付けられた恐怖をすぐに拭うことなんてできません。
そのため、神父の"謝る機会を与えたか?"の言葉に怒りを覚えるのも理解できるのですが、何かにつけて攻撃的で社会的な協調性が欠けているように思える主人公にイラつきを感じました。

・同じ顔
全く同じ顔と気づきずらい加工しているように思えるくらい、同じ顔なのは学生と神父?なんか似てるか?くらいにしか思ってませんでした。

これは主人公が男性を不審に思っていることからレッテルを貼って村人は全て同じ顔に見えるという解釈で良さそう。ちょっとしばらく気付けなかったです。

・繰り返される悪夢
インタビューを見て理解しましたが、ジェンダー的な偏見についての作品ということでやっと合点がいきました。

タンポポと同じ顔の男性達が何度も出産のように出現するシーン。
タンポポはタネのみで種を増やす単一性の植物でクローンを作り出す、男性達も男性らしさというものを引き継ぎ産み出されて継承することの示唆は正直悪趣味すぎます。

緑の裸体の男が振りまくタンポポのタネも男らしさを振りまき、それを吸い込んだ主人公がむせるというのも"男性らしさ"の害を表しているのでしょう。

最後に出てくる死んだ夫が求める"無償の愛"、女性らしさを主人公に求めて互いに理解し合わなかったが、主人公は"そう"と言い放つのは母性や女性らしさの押し付けを理解して、夫の支配欲の根源をわかったことで呪縛から逃れられたということかと解釈できる。

・鹿
ぜんざいさんのレビューから愛の意味があることを思い出したので、恐らく冷めた愛情(死んだ鹿)の中にタンポポのタネ(有害な男らしさ)が入り、死体が朽ちた(愛が消えた)という意味合いかなと捉えました。
あれこれ一個ずつ考えるにはミームが多過ぎる…。

・悪夢と現実の境
友人が現れ車は大破、玄関や主人公に血糊があることから誰かしらと死闘を演じたのは現実。ただ誰となのかどこが現実だったかは曖昧にするあたりは好みでした。

・総評
-助けに来る友人が妊娠しているという細かくまた意味合いを最後に込めてるんだろうなとかうんざりするほど、ジェンダーについて提起
-気色悪い上で理解させるつもりがあまりない映像の連続
-アダムとイヴの禁断の果実から始まる宗教関連のミーム

いやお腹いっぱいですよ。
前菜がヘルシーで彩りや香り豊かで楽しめたのに、急に各国の癖のある香草を大量に放り込んだ油ぎったメインディッシュを何個も繰り出してこられたような。
確かな満足。どころで済むか!くどいわ。

もう少し手加減して欲しいし、今後A24作品だと気付いたら、ある程度前評判は見ておこうかなと珍しく事前確認したくなるレベルの作品でした。
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